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大丈夫、きっと大丈夫

【創side】 「創っ!」 「っ!け、ぇ…⁉︎」 ピアノを弾いていたら突然ドアが開いて、ばたばたと継が部屋に入って来た。しかも腰にタオルを巻いただけの裸同然の格好で。 「おかえりなさい。連絡くれたら下にいたのに…」 「そんな事してる間に一歩でも歩きたかったから…創、ちゅーしたい」 椅子に座ったままのおれをぎゅってしてくれる体から香るのは、ボディーソープと継の匂い。それを思う存分に吸い込んで、継の腕の中から顔を上げた。 すぐに柔らかな唇が降ってきて、吐息が重なる。 「…ん、継、ふく…着ない、の…?」 「いらない、すぐ脱ぐし」 キスの合間に気になっていたことを聞いてみた。継の髪からぽたりとおれの頬に垂れた水滴を親指で拭ってから、まあ予想通りの答えが返ってくる。 触れるだけだったのが、だんだんと深くまで蹂躙されて、吐息が奪われていくみたい。 触れられた頬が、蠢く舌が、体が、溶けちゃいそうに熱い。 継の首に腕を回すのが合図だったように、おれの膝裏から手を差し入れてきて、そのまま抱き上げられた。 「試合、どうだったの?」 「準決勝止まり。格好つかねえよな」 「そんな事ないよ、継はすごくかっこいいもん」 そっとベッドに降ろされて、上から覆い被さってくる継を見つめる。火照った肌に浮かぶ汗が妙に色気があって、いつもよりカッコよく見えた。 ぽたり、再び頬に水滴が落ちる。 「継、髪拭かないと」 「創から離れたくない」 「うん、それはおれも同じだけどね。風邪ひいて熱出したら坐薬入れるよ?」 「タオル持ってきます」 がばっと離れると、来た時と同じようにばたばた音を立ててお風呂場に戻って行った。可愛いなあ。

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