【創side】 コンクール当日。課題曲の他には自作の曲を弾く事になっている。 今日のために作ったこの曲。おれの気持ちをいっぱい込めたこの曲。 「創、こっち」 「継？」 次の次がおれの演奏順で、舞台袖に上がろうとした時、廊下へと続くドアが開いて継が手招きする。素直にそれに従って廊下へ出ると、ぎゅっと抱きしめてくれた。 こつんと額を合わせて、ゆっくりと頭を撫でる手のひらが心地よくて目を閉じる。 「創なら大丈夫、きっと大丈夫」 「………うん、ありがとう」 大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。継の腕に抱かれて、胸に擦り寄る。 とくん、とくん。 おれが一番安心する音とリズム。 「継…ちゃんと、聴いててね？」 「おう、当たり前」 継に贈るメッセージを、いっぱい詰め込んだから。