341 / 507

【番外編】終わりと始まり

【創side】 継が選んでくれた、お気に入りのダッフルコートとニットキャップ。二人で手を繋いで参拝の列に並んでいると、あちこちからいい匂いがする。 キョロキョロと見回してしまうおれの頭をこつんと叩く継を見上げれば、苦笑いで言われた。 「あとで、な?」 「綿あめと鈴カステラがいいな」 「わかってるって」 おでこにちゅ、とキスしてくれるから、おでこが一気に熱くなる。飄々とそんな事をやってのける継は、やっぱりかっこいい。 いつの間にか繋いだ手のひらが継のコートのポケットに入れられていた。ほら、こんなさりげないとことか、どれだけ好きにさせれば気が済むの? 「あ、もうすぐじゃね?」 ふと反対のポケットからスマホを取り出した継が、画面を見ながらそう呟いた。周りを見ると、みんなどこかそわそわしてる。 参拝の列は0時の時報と共に進むらしくて、さっきからまだ一歩も進んでない。ちょっと寒くなってきて、思わず継の腕に擦り寄ってみた。 「ん、どした?」 「…ううん、ちょっと寒かったからくっつきたくなったの」 「そっか。帰ったら熱くしてやるな?」 耳元でそんな事を囁くから、一瞬でほっぺたに熱が集まるのがわかった。うわあ、恥ずかしいよ! ざわざわしてる周りの声が、カウントダウンを始めた。 繋いだままの手にぎゅっと力を入れると、継にこの気持ちを伝えるためにそれを引き寄せる。 「創?」 「今年はお世話になりました。来年もよろしくね?」 「ははっ、なんだよ改まって」 だって、伝えたかったんだもん。 …5 「オレも、お世話になりました」 「うん」 …4 「来年も、よろしくな?」 「うん」 …3 「来年は、もっとオレを好きにさせるから」 「ふふ、これ以上好きにさせてどうするつもり?」 …2 「…だから、来年も、再来年も、ずっとオレと一緒にいてください」 「こちらこそ、ずっとずっと、隣にいてね?」 …1 「愛してる、創」 「愛してる、継」 ……あけましておめでとうございまーすっ! 鐘の音とともに歓声が湧き上がる中、お互いの吐息を重ねて、一年の終わりと始まりを大好きな人と一緒に過ごせる幸せに包まれた。

ともだちにシェアしよう!