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午前二時のコール
「げっ、母さん何でいんの⁉︎」
「あんたね、創ちゃん一人でこんな持てるわけないでしょ!」
体育館のすぐ前に車を付けてくれたので、とりあえず降りて梅さんの所に行こうとしたら、ランニングを終えた大ちゃんとジャスティンに会えた。
「あれ、継は?」
「創が来た時に自分がいなきゃだめだからって、中で筋トレしてる」
苦笑しながら大ちゃんが体育館の中を指差す。
好美さんへ先に行ってもらうように伝えて、開け放たれたドアに掛かる暗幕を捲って顔をくぐらせる。そこにはひたすら腕立て伏せをする継がいた。この真剣な顔が、かなり好きだったりします。
「継、お疲れ様」
「っ!そぉっ!」
そう声を掛けると、おれに気付いた継がぱっと飛び起きて、一目散に走ってきて抱きしめてくれる。半日ぶりの感触が嬉しくて、おれも継の背中に手を回した。
ぐりぐりと肩に額を押し付けてくる。ちょっと痛いかな。でも可愛い。
「継、梅さんに迷惑かけてない?」
「オレ、ちゃんと頑張ってる…」
「そっか、そうだね、いい子」
汗で湿った髪を撫でてあげると、さらに強くなった腕の力が心地良い。
継はかなり気分屋さんだから、梅さんの電話の話し振りだと、きっといつもの調子でプレイが出来てないんだろうな。その原因がおれにあるかと思うと、嬉しいんだけどちょっと複雑。
ぽんぽんと背中をあやすように叩いてあげると、やっと顔を上げてくれた。
「カレー、作ってあげるね?」
「ん…一緒に食う?」
「そうだね、そうしよっか」
嬉しそうに笑う継を見たら、なんだか胸がきゅんと締め付けられる。
可愛いなあ。やっぱり大好き。
「継のために美味しいカレー作るからね。だから、」
キスして、と言いかけた時、突然ばさりと何かに周りを覆われる。
それがおれの後ろではためいていた暗幕だと気付いた時には、顎を掴まれて唇を塞がれていた。
「…ン、けぇ」
「我慢してんだから、あんま可愛い事言うなよ…」
「うん…」
ちゅ、と触れるだけのキスじゃ、正直かなり物足りない。それがわかったのか、継の親指がそこを撫でる。
いつもならもっと深くまで求め合うんだけど、さすがに今それをしたらお互い止められる自信がない。その代わりとばかりに、鼻先に、頬に、額に、継がキスの雨を降らせてくれた。
「帰ったら、な?」
「…ん、おれも頑張る」
もう一度唇でそこに触れてから、継の胸に顔を埋めて充電してもらった。
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