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午前二時のコール
【創side】
「えっと、あの…継?」
「んー?」
「あのね、ぎゅってしてくれるのは嬉しいけど、今みんなにご飯よそってるんだよね」
「メシくらい自分でよそえお前ら」
「こぉら、そんな事言わないの。ね?」
「ん…」
うーん、どうしよう。好美さんと一緒にカレー作ってご飯も炊けたから、みんなを家庭科室に呼んで順番にご飯よそってあげてるんだけど、さっきから継が後ろにぴったりくっついて離れません。
ぎゅってしてくれるのは嬉しいんだよ、ほんとに。でも今はちょっと、動きにくいかな。そんな事言ったら、継の事だから拗ねちゃうよね。それはそれで可愛いとか思うあたり、兄バカなんだと自覚はあるけど。
「ね、継…いい子だからちょっと離して?」
「………ん」
あ、ちょっと腕の力が緩くなった。でも継の腕の中から解放してくれるつもりはないみたい。そのままの体勢で首筋に顔を埋めてきた。
うーん、そんな可愛い事されたら、これ以上言えないよね。
「大介から聞いてはいたけど、学校でもほんとべったりなのねー」
横でカレーをかけてあげてる好美さんが苦笑しながらも、なんだか楽しそうに見てくる。
まあいっか、動けないわけじゃないし。
新しくお皿を取って、ご飯を盛る。これくらい食べれるよね?と後ろに張り付く継に確認すると、無言のままこくんと頷いてくれた。
好美さんからレードルを受け取ってご飯にかけて手渡そうとしたら、また肩口にぐりぐりと額を押し付けてきた。
「ん、ちょっと待ってね?」
継のお皿を置いて、新しくご飯とカレーを少しずつ盛ると、やっと離れた継が二つとも持ってくれた。そのまますたすたと一番後ろのテーブルに着き、ん、と椅子を引いてくれる。
「ありがとう。食べよ?」
「ん、いただきます」
「はい、どうぞ」
どんなにお腹が空いてても、食材とそれを育てた人、そして料理してくれた人に感謝の挨拶をきちんとするのが渡辺家のきまり。ぱちんと手を合わせてお辞儀する継の頭を撫でると、スプーンを差し出してきた。じっとこちらを見てる。可愛いなあ。
ほわんとした気分になりながら、継からスプーンを受け取り、カレーを掬って口元に運ぶ。躊躇いもなく口を大きく開るので、そこへ収めてあげると、嬉しそうにもぐもぐと口を動かす。
どうしよう、ほんと可愛い。可愛いっていうか愛しい?胸がぎゅってなる。
ああ、やっぱり大好き。
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