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林先生のお願い
「こんにちは、遅くなりました」
「創ちゃん!」
指揮台に譜面を置いた林先生がこちらに気付き、腰まである長いポニーテールをひらひらさせながら駆け寄って来る。
がばっと抱きしめられる寸前で継に腕を引かれて、なぜか継に抱きしめられていた。
「やめろっつってんだろ!オレの創なの!」
「ケチ!いいじゃない減るもんじゃないんだから」
「ダメなもんはダメ!」
「男の嫉妬はみっともないわよ」
「お前も男だろ!」
そうなんです、林先生は男の人なんです。
でも男の人に見えないくらい綺麗で、その指先から弾かれる音もとても綺麗な響き。ピアニストとしても指導者としても、おれが尊敬してる人。
そんな林先生は、こうしていつも継をからかって遊ぶ。まるでちょっと前のジャスティンみたい。
「つーかさ、何の用?」
「あ、そうそう、忘れてたわ」
ぽんと両手を叩いて、指揮台に置いた譜面を持って戻って来る。
これ、と渡された楽譜。
「ああ、宝島?これ、おれは原曲の方が好きだなあ」
「あとこれとこれとこれとこれと…」
「え、ちょっと待って…」
次々に渡された楽譜。なんだろ、なんかイヤな予感がする。
見かねた継がそれを持ってくれた。あ、ご機嫌斜めな顔だ。
「創ちゃん、文化祭で指揮やって!」
「え…ええーーーーっ⁉︎」
うーん、どうしよう……
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