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【番外編】甘い甘い

【創side】 「お兄ちゃんこれあげるー!」 「あっ、私も。今度またお菓子作ってね!」 いつの間にか机の上にはたくさんのチョコやらパックのココアやらが置かれ、気を利かせた誰かが紙袋に入れてくれた。 お菓子くれるのは単純に嬉しいんだけどね、でもほら、目の前で唇尖らせてる可愛い継のご機嫌も心配になってきた。まあ、継の机の上も同じ状態なんだけど。 今日はバレンタイン。朝からこんな調子です。もちろんこの中に本命チョコがあるはずもなく、ただ単にお菓子をくれるからもらっただけ。それだけ。 「ほら継、チョコもらったよ。食べる?」 「いらねえ」 「一緒に食べよ?」 「いらねえ」 あらら、相当ご機嫌はよろしくないみたい。 「あ、これ一個しかないなあ。継と食べたいなあ?」 「いっ、いらねぇ…」 「そっかあ、じゃあ大ちゃんと半分こしよっかなあ?」 「おいっ!俺を巻き込むなっつーの!」 「はい、大ちゃんあーんして?」 一口サイズのチョコのパッケージを開けて、半分だけ唇で挟むようにして咥える。 後ろにいる大ちゃんの机に振り返ると、わたわたしてる大ちゃんがいた。 「んー」 「ちょ、待て…!」 突然ガタッと音がして、ぐいっと肩を掴まれる。一瞬にして体を反転させられて、目の前に継の顔が迫る。 頬に手のひらを添えられた時には、継がもぐもぐとおれの口から奪ったチョコを食べていて。 「ごちそーさん」 「継、それ一個しかないって言ったよね?」 いちごプリン味のチョコ。すごい美味しそうなのに一個しかなかったから、継と半分こしようと思ったのに。 今度はおれが唇を尖らせると、ニヤリと継が笑った。あ、なんか良くない事考えてる顔だ。 「口開けて」 「んっ…」 唇を親指でそっと撫でられて素直に開く。すぐにそこが塞がれて、熱い舌と溶けたチョコが入り込んできた。 周りで騒ぐ女子の皆の声とシャッター音。もう慣れたけど。 思う存分おれの咥内を這い回って満足したのか、ゆっくりと離れていく。 「あま…」 「ん、でも美味しいね」 もう一度唇を重ねて、そのまま囁いた。 「帰ったらもっと甘いものあげるね?」 おれが継にあげるのは、もちろん本命チョコだから。 とびっきり甘いものをあげる。 ハッピーバレンタイン!
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