380 / 507
合宿最終日
【創side】
家を出る直前にスマホを確認したら、ジャスティンからメールがきていた。
【Please look from the outside】
ああ、なるほど。昨日の様子見れば納得だよね。おれの姿を見ただけで、ゲーム中でもボールを持ったまま走ってくるんだから。
でも、ほんとはそれがすごく嬉しいんだけど。
継はおれに対する感情を態度に出す。だから嘘も吐けないし、素直に表現してくれる。よくヤキモチ妬くし、どこでも誰がいてもぎゅっと抱きしめてくれる。
愛されてるなあって実感するんだ。
「ふふ、もう、大好き」
心の中がふわりと暖かくなって、思わずそう呟いた。
スマホをパーカーのポケットに入れて靴を履く。玄関の外からは、たくさんの蝉の声が聞こえてきて少し心が折れたけど、もうすぐ継に会えると思えばどうって事ないよね。
「あつ……」
ドアを開ければそれは更にボリュームを増して、おれの耳から頭の中に入ってくる。色んな鳴き方をするんだなあ。
蝉って、たしか何年も土の中にいて、たった1週間くらいしか生きられないんだったっけ?そりゃあ地上は天国みたいに感じるだろうね。
その短い間に好きな相手を見つけなきゃいけないのか…こんなにいっぱいいる中で、たった一匹だけに巡り会うって、すごく運命的だなあ。
でも、おれと継なんか、生まれる前から巡り会ってたんだよ。
…なんて、蝉に自慢したところでどうにもならないけどね。
さ、早く継に会いに行こう!
ともだちにシェアしよう!