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やわらかな溺愛
【継side】
「うわあっ、見て見て継っ!」
ギリギリで間に合ったイルカショー。けど夏休みって事もあって、座席はほぼ満席。やっと見つけた一席に二人で座る。というか、座ったオレの膝の上に創が座る。
後ろから抱き込んで肩に顎を乗せて一緒に眺める。深いプールから勢い良く飛び出したイルカ達が、次々とジャンプして水しぶきを飛ばしてる。時折釣られたボールを尾びれで蹴ったり、ぐるぐると何回転もしながらジャンプしたり。
「すごーい!」
「すっげえなー!」
珍しくきゃっきゃっとはしゃぐ創をぎゅっと抱きしめて、どさくさに紛れて頬ずりしてみた。ああ、もうほんと可愛くて困る。
早く帰りたい。この可愛い創を誰にも見せたくない。
「継、見える?」
ふと振り返る創が、そうやって気遣って聞いてきた。
正直イルカはどうでもいい。そんな事言ったら拗ねてしまうのは分かり切ってるから、大丈夫、ありがとうとだけ答えて髪を撫でると、またイルカ達に視線を向けてしまった。
こっち向いて欲しい。でも楽しそうな創も見てたい。すげえ矛盾してるよな。
「はーっ、すごかったね!」
「ん、そうだな」
「あの赤ちゃんイルカも可愛かった!」
お前の方が可愛いよ、創。耳元で囁けば、繋いだ手が一気に熱くなる。
ああもう、ほんと可愛い。
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