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ここで、キスして

【継side】 順路を進むと、眩しい場所に出た。周りを水槽に囲まれたトンネルの中を、エスカレーターに乗りながらゆっくりと昇っていく。 「うわあ、ウミガメっ!ほら!」 「おお、でけぇ…!」 トンネルの真上を優雅に泳いで行くウミガメを見上げる創が、その動きに合わせてオレに凭れてくる。もちろんしっかり支えてやりながら、一緒にそれを目で追った。 ウミガメが通りすぎると、そこからジンベイザメが泳いでくる。 「見て見てっ!」 「でっか!」 真上に来ると光を遮って暗くなる。周りに目を奪われていた創の腰を引き寄せて、エスカレーターの降り口に差し掛かった。 降りるぞ、と声をかければ、うんと素直に返事して足を上げる。 エスカレーターの先の角を曲がれば、この水族館イチオシの巨大水槽が目の前に広がった。 「早くっ!行こ!」 「創⁈ほら、走ると転ぶって…!」 「っわ!」 言ったそばから足元に置いてあった誰かの荷物に躓く。咄嗟に繋いだ手を引いて、空いた反対の腕で抱きしめた。 創がこんなテンション高いなんて珍しい。よっぽど楽しいんだろうな。 「ほら、気を付けろよ?」 「うん……あ、りがと」 「…ん?どした?」 一瞬オレの顔を見たものの、すぐにぱっと目を逸らして肩のあたりにぐりぐりと額を押し付けてきた。マジでどうしたんだ… いつもと違う創にちょっと戸惑いながらも、可愛いからつい頭を撫でてしまう。 「…継、なんか今すごいカッコよかった」 「ははっ、そっか。惚れ直した?」 真っ赤な顔を上げた創の頬にちゅっと唇で触れると、こくんと頷いて少し潤んだ目で見つめてきた。くいくいとオレの上着を引っ張ると、指先で唇をなぞってくる。 「継……キス、して?」
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