403 / 507
並んで幸せ
その柔らかい唇に触れる寸前、不機嫌そうな声に邪魔された。
「おい、こんなとこでイチャイチャすんじゃねえよ」
「うるせえヘタレ」
苦笑しながら創が鼻先にちゅってしてくれる。見上げればあのヘタレカップルがいた。
なんだよ、自分らが出来ないからって八つ当たりすんなよな。
「継、お昼ご飯にしよう?」
「ん、わかった」
先にベンチから立ち上がり創に手を伸ばす。素直にそこに手のひらを重ねてくれるから、オレの方へと引き寄せた。
四人でレストランに向かうと、ちょうど席が空いていてすぐに案内してもらえた。オレ達の後から来た人は順番待ち。
この水族館のレストランは、大水槽に面したテーブルが人気で、偶然にもそこに通してもらえた。創を水槽側に座らせ、オレはもちろんその隣。大介も水槽側に座ってる。
「何にする?」と創がメニューを広げて見せてくれた。内容は普通のファミレスと変わらない。
「あっ、これにする!」
創が指差したのはホットケーキ。粉砂糖でイルカとペンギンの絵が描かれてる。うん、創らしいな。
オレは…どうしよう。オムライスもカレーも、創が作ってくれるのが一番美味いから、外ではあまり食わない。
何にすっかなあ。創食いたいなあ。
「んー、これでいいや」
「うわあ、マンタが来たよっ!」
すっかり水槽に夢中になってる創が可愛くて、頭を撫でてやったら嬉しそうにこっちを向いてくれる。可愛いなあもうマジで。
通りがかった店の人に注文を伝え、テーブルの下で創の手を取り指を絡める。当たり前のように握り返してくれるのが、すげえ嬉くて、幸せだなあと実感した。
創の耳元に近付いて「創、愛してる」と囁く。一瞬にして頬を染める創が、ふわりと微笑んで「おれも、愛してる」って言ってくれた。
あー、早く帰りたい。
ともだちにシェアしよう!

