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この手で、瞳で、唇で、愛を伝えよう
いつもより少しだけ小さく切り分けられたケーキは、店員に皿を渡してショーケースから直接取り分けてもらう。どれにしようか悩んだ挙げ句、ショートケーキと苺のムース、苺のタルトを選び、盛り付けてもらった創。
「じゃあオレはこっちにしよ」
継が選んだのはチョコレートケーキに紅茶のシフォン、そしてグレープフルーツのタルト。『こっち』というのは、創が悩んでいたけれど、結局選ばなかったケーキ。「うーん、どうしよう…」と唸りながらショーケースを見ていた創を見れば、どれとどれで迷っているのかなんて継にはすぐに分かる。
席に着いて「いただきます」と手を合わせる創に続いて継も手を合わせ、生クリームをたっぷりつけたシフォンケーキの乗ったフォークを創の口元に差し出した。戸惑いもなく口を開くと、ぱくりとそれに食い付く創。
「美味い?」
「ん!」
にっこり笑って頷く創の唇についた生クリームを指で拭ってやり、そのまま自分の舌でペロリと舐め取る。次にチョコレートケーキを一口分フォークに乗せ、同じように創の口元へと持っていく。
「んんー、美味しいー!」と幸せそうに笑う目の前の創を、目を細めてじっと見つめながら、やっと自分の口元へとケーキを運ぶ。
継にとってみれば、正直かなり甘いケーキ。けれど、こうして創と二人でならさほど感じないのは、ケーキよりも甘いものが目の前にあるから。
「そのシフォンケーキ美味しいね、次持ってくる!」
「じゃあオレは帰ったら創食べたい」
左手で頬杖をついて熱い視線を投げかければ、ほんのりとその頬を染めてこくんと頷く創。それに気を良くした継がタルトの上に乗るグレープフルーツを口に含むと、酸っぱいはずが桃のように甘く感じた。
「創はケーキなんかより甘くて美味いよ」なんて、空いた皿に再びケーキを取りに行く時に耳元へ囁くように伝えると、「全部あげる。残さないでね?」とふわりと微笑んで言われてしまい、さっさと帰り支度をした継を宥めながらケーキを食べた。
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