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ジェラシー爆発
【継side】
外周ランニングから戻って体育館へ向かう途中、なんか創が呼んでる気がして足を止めた。音楽室の方を見上げてみたら、やっぱり創が窓からこっちに向かって嬉しそうに手を振ってくれてる。
オレもすげえ嬉しくて手を振り返すと、創の後ろから誰か出てきた。で、そのまま創に抱きつきやがったあの野郎!!!!
思いっきりコンクリートを蹴ってダッシュして、一番近い階段を目指す。ちょうど2年の下駄箱がそこにあったから靴を履き替えて、廊下を滑りながら走る。
一気に階段を三階まで上がって、音楽室のドアを開けた。
「オレの創から離れろぉぉおおっっ!!!!」
「継⁉︎」
「チッ………」
あいつ、中学の頃から創のまわりウロチョロしてたやつだ。くそっ、そういや吹奏楽部だった…
ぐいっと創の身体を引き寄せてオレの腕に閉じ込めると、創が鎖骨のあたりにすりすりと額を押し付けるようにしてきた。嬉しい時とかヤってる最中のすげえ気持ちい時とか、よく創はこうしてくる。今は…いきなりオレが来たから嬉しいんだよな、うん。
勃ちそうになるのを必死に抑えて、余裕こいて創の髪を撫でた。見せ付けるようにそこにちゅっと口付けて、あいつの反応を見る。ははっ、すげえ悔しそう。
創が可愛がってる後輩だってのは知ってる。けど、だからってオレの創に勝手に触ってんじゃねえよ!
創の柔らかい髪を撫でていた手のひらを腰のあたりに下ろして、そのまま体ごと引き寄せる。全く抵抗なくこちらに寄ってきてくれた。
隣に並ぶのはオレだ。誰にも譲らない。
「創先輩、向こうで自主練見てください」
「甘えんな、てめぇ一人でやれ」
「継先輩には関係ないでしょう?」
「創はオレのだ、お前が関係ないだろ」
「…っ!」
ぎゅっと拳を握りしめて唇を噛むその姿は、負けを認めるのができない負け犬だ。けど、創は渡さない。
創は優しくて、でもその優しさが残酷だから、きっと一番分かってないんだ。
「新井くん、じゃあ行こっか?継、来てくれてありがとうね」
にっこりとオレにだけ見せる笑顔でそう言うと、するりと腕を抜ける。先に立って歩く創の後ろを、新井とかいうやつが着いて行く。
音楽室の端に寄せた机周りでは、新井と同じパートの奴らが心配そうにこっちを見ていた。
譜面に視線を落とした創が、すぐに何かを思い出したみたいに顔だけこっちに向けてきた。
「継、夜ご飯オムライスとから揚げどっちがいい?」
「どっちも!」
「ふふっ、わかった。部活終わったら迎えに来てくれるでしょ?」
「ん、待ってろな」
「迎えに来て」じゃなくて「来てくれるでしょ」だぞ、オレが来るのが当然みたいに思ってる。まあ当然だけど。
そんなちょっとした事が、オレと創の仲を見せ付ける一番残酷な方法だって、きっと気付いてないんだろうな。
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