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止まらないドキドキ

【創side】 「はいはーい、じゃあ今日はこの辺で終わりましょ」 林先生が譜面台を畳むと、部長さんの号令でみんなが挨拶をして解散になった。 さっき新井くんの自主練の成果を披露してもらいながらサックスパート全体を合わせたので、後半はそこそこの仕上がり。あとは個人の力量次第ってとこかな? 文化祭まであと一ヶ月もない。長峰さんのぶんまでしっかり仕上げなきゃ! ぐっと握っていたタクトを置いた時、ドアが開く音がした。ゆっくりそちらを見てみれば、会いたかったあの姿が見えた。 「継っ!」 「創、終わり?」 ひょっこりと顔を出したのは、おれの大好きな継。あ、なんかこの一瞬ですごい笑顔になったのが自分でもわかるくらいにすごく嬉しい。 楽譜をファイルに入れていたら継が後ろから回り込んできて、背中が暖かくなる。 「なに、オレが来たのそんな嬉しい?」 「…うん」 やっぱり継にはわかっちゃうのかな。 こうやって包み込むみたいに優しく抱きしめられると、おれは継のなんだって実感する。心の中がふわふわして、すごく幸せ。 嬉しくて幸せなんだけど、耳元でそうやって囁かれたら困る。吐息が耳にかかる。いつもよりちょっと低い声に、なんだかドキドキするんだ。
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