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踊る音符

並んだ椅子が二つ、並んだ譜面も二つ。二重に響くのは軽やかな音。 創が用意した譜面は、二人の為の連弾用の譜面だった。 継が何も知らなかったのも当然で、吹奏楽部の練習で音楽室にいる間だけ譜面を起こしていた。しかも、一度もピアノで音を出さずに作曲したのだから、周りの部員も知るはずもない。 吹奏楽部に顔を出すようになってからたった一ヶ月足らず。そんな短時間で書き起こした譜面は、顧問の林お墨付きの出来上がりだ。 「…スポーツ万能で勉強もできて、おまけにピアノも弾けるイケメンとか……もう完璧勝てる気がしない…」 「まあねー、あの子らほんとちっちゃい頃から習ってたからね」 時折譜面から目を離して見つめ合いながら楽しそうに弾く様子を見て、がっくりと項垂れる新井。その横では林がうんうんと頷きながら目を閉じてじっと聴き入っていた。 周りの部員も片付けの手を止めて、二人の様子を写真に撮ったり、座ってじっくり聴く者もいる。 はあ、とため息を零す新井の隣に立った次期部長である長峰が、ぽんとその肩を叩いた。 「スポーツも勉強もできて、おまけに可愛い子ならここにいるけど?」 「え………⁉︎」 「ん?」 「え、あの……………?」 「ん?」 「あ、いや、あの…長峰先輩は、可愛いってより、き、き…れ、い、です…」 「ふふっ、ありがと。今フリーだから」 「えっ、あ、の……っ!」 首まで真っ赤にした新井の隣に隙間なく並ぶと、細い指がゆっくりと手のひらに絡められた。 開けられた窓からは、二人の奏でる音符が青空に吸い込まれていく。 曲名は、踊る音符たちーーーー

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