442 / 507

たっぷりの愛をひとくち

【継side】 「継、そろそろ帰ろ?」 二人と別れて屋台を見て回り、腹も膨れた頃、創がオレの浴衣の袖をくいっと引っ張った。 「ん、もういいのか?」 「うん。帰ってケーキ食べよ!」 にっこり笑って、大事そうに抱えたケーキの箱を示す創の額にちゅっと唇を寄せた。 少し赤くなった創が、それに…と続ける。 「いっぱい、キス、したい、し…継と、したい……」 「創…なんでこんな可愛いんだよクソっ!」 ずくんと反応しかけたのを必死で抑えて、さっきよりも更に創を引き寄せて歩いた。 帰り道ではこれから祭りに向かう人達と擦れ違う。その度に、どんな着飾った女子よりも、オレの隣に並ぶ創が一番可愛いと実感する。だって、実際そうだろ? 創は化粧なんかしなくても元から可愛いし、肌も白くて柔らかいし、可愛いし、愛想もいいし、気がきくし、可愛いし。とにかくめちゃくちゃ可愛いんだよ!!!! 今だって大きなケーキの箱を抱えてるせいでオレと手が繋げないからって、ぴったりくっついて歩くんだぞ?超絶可愛いじゃんかよ!!!! 今すぐここで襲いたいのをぐっと堪えて、なんとか足を進める。途中でこれから祭りに行くっていうクラスの女子達に会って、写真撮ってもらった。こいつらも、何も言わなくてもちゃんとオレに画像送ってくれる。今年はクラスメイトに恵まれたな〜。 写真のお礼にと、さっき射的で取った景品を押し付けた。もちろん創が気に入ってたぬいぐるみ以外だけど。 やっと空いた片手を振って別れると、そのまま創の腰を引き寄せた。 「うわっ、あぶ…!」 「へへっ、やっと手ぇ空いた」 少しだけよろけた創をしっかりと支えてやる。そのまま近付いた頬に一瞬だけ唇を寄せた。 ほんとはもっとしたいんだけど、今は我慢。ケーキ抱えてる創に何かしたら、今夜は口聞いてくれないの分かってるしな… ゆっくり夜道を歩くのも、たまには悪く無い。 **** 創がここで待っててというので、ぬいぐるみを置いて大人しく玄関で待ってると、ケーキを冷蔵庫に入れた創がててて…と走ってくる。 ふわりと微笑んで、両手を広げた。 「ふふっ、やっとおれもぎゅって出来るね!」 「創っ!」 下駄を脱ぎ捨てた音がカランと聞こえた他は、創の熱い吐息しか聞こえない。 「ケーキは後でな」と耳元で囁くと、素直にこくんと頷いてくれる。そのつもりで先に冷蔵庫に入れてきたんだろうし。 まずはケーキよりも甘い創を遠慮なく一口貰った。
0
いいね
2
萌えた
0
切ない
1
エロい
1
尊い
リアクションとは?
コメント

ともだちにシェアしよう!