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たっぷりの愛をひとくち
【継side】
「継、そろそろ帰ろ?」
二人と別れて屋台を見て回り、腹も膨れた頃、創がオレの浴衣の袖をくいっと引っ張った。
「ん、もういいのか?」
「うん。帰ってケーキ食べよ!」
にっこり笑って、大事そうに抱えたケーキの箱を示す創の額にちゅっと唇を寄せた。
少し赤くなった創が、それに…と続ける。
「いっぱい、キス、したい、し…継と、したい……」
「創…なんでこんな可愛いんだよクソっ!」
ずくんと反応しかけたのを必死で抑えて、さっきよりも更に創を引き寄せて歩いた。
帰り道ではこれから祭りに向かう人達と擦れ違う。その度に、どんな着飾った女子よりも、オレの隣に並ぶ創が一番可愛いと実感する。だって、実際そうだろ?
創は化粧なんかしなくても元から可愛いし、肌も白くて柔らかいし、可愛いし、愛想もいいし、気がきくし、可愛いし。とにかくめちゃくちゃ可愛いんだよ!!!!
今だって大きなケーキの箱を抱えてるせいでオレと手が繋げないからって、ぴったりくっついて歩くんだぞ?超絶可愛いじゃんかよ!!!!
今すぐここで襲いたいのをぐっと堪えて、なんとか足を進める。途中でこれから祭りに行くっていうクラスの女子達に会って、写真撮ってもらった。こいつらも、何も言わなくてもちゃんとオレに画像送ってくれる。今年はクラスメイトに恵まれたな〜。
写真のお礼にと、さっき射的で取った景品を押し付けた。もちろん創が気に入ってたぬいぐるみ以外だけど。
やっと空いた片手を振って別れると、そのまま創の腰を引き寄せた。
「うわっ、あぶ…!」
「へへっ、やっと手ぇ空いた」
少しだけよろけた創をしっかりと支えてやる。そのまま近付いた頬に一瞬だけ唇を寄せた。
ほんとはもっとしたいんだけど、今は我慢。ケーキ抱えてる創に何かしたら、今夜は口聞いてくれないの分かってるしな…
ゆっくり夜道を歩くのも、たまには悪く無い。
****
創がここで待っててというので、ぬいぐるみを置いて大人しく玄関で待ってると、ケーキを冷蔵庫に入れた創がててて…と走ってくる。
ふわりと微笑んで、両手を広げた。
「ふふっ、やっとおれもぎゅって出来るね!」
「創っ!」
下駄を脱ぎ捨てた音がカランと聞こえた他は、創の熱い吐息しか聞こえない。
「ケーキは後でな」と耳元で囁くと、素直にこくんと頷いてくれる。そのつもりで先に冷蔵庫に入れてきたんだろうし。
まずはケーキよりも甘い創を遠慮なく一口貰った。
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