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積木祭
文化祭当日は、朝から天気も良くて創もご機嫌だった。というのも、ロッカーで例のフリフリに着替えて教室に入ると、開始前に一足早くケーキを女子に貰ってたから。
にこにこ笑顔でケーキ食べる創とか、そりゃもう食べちゃいたいくらいに可愛い。
オレも着替えて創の向かいに座ると、口元にフォークが差し出される。食べかけのチョコのやつじゃなくて、その隣のチーズケーキ。ほら、創はちゃんとオレの事をわかってる。
「はい、継」
「ん……あ、これ美味いかも」
「本当?よかった!」
別に創が作ったケーキじゃないのに、ケーキを褒められて喜んでる。店で普通に売ってるんだから美味いのは当然なんだけどな。でも創がオレのために作ってくれるやつの方が何倍も美味い。
あー可愛い。写真を撮ろうと思ってポケットを探るけど、着替えた時に鞄に入れっぱだったみたいだ。
どうする、戻るか?いや、でもこの可愛い創から離れたくない。
そんな葛藤をしていると、後ろからシャッター音が聞こえてきた。振り返るとそこにはやっぱり正木がいて、他にも何人かいる。
「あ、今日の写真は任せてね」
「うんうん、思いっきりイチャついちゃって!」
まあこいつらはいつもオレにちゃんと綺麗に撮れた写真をくれるし、別にいっか。
『……では、今年度の積木祭を開会します!』
校内アナウンスで校長の開会宣言が流れると、廊下に並んでいた客がぞろぞろと入ってくる。手際良く席に案内して注文する様子を、教室の真ん中に設置されたオレ達の席から眺めていた。
創が淹れてくれた紅茶を啜っていると、一般客がこっちに寄ってくる。
「あ、あの…写真撮ってもいいですか?」
「へ?ああ、別に構わないんじゃねえの?」
創と二人で写真を撮られまくった。何回も何回も。
そのうち創の皿のケーキが無くなって、そのタイミングで腹いっぱいになったらしく、ごちそうさまと手を合わせる。くあー、可愛い!
すっかり冷めた紅茶を飲み干すのを見届けてからぽんぽんと膝を叩くと、嬉しそうに近寄ってきた。
「えへへ、やっぱこっちがいいね」
「ん、当然」
膝の上でオレの首に手を回してくっ付いてくる創。細い腰をしっかりと抱き寄せると、一斉にシャッター音が響いた。もう気にしてないけどな。
ぺろりと唇を舐めてやると、いつもより甘かった。
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