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やくそく
「なあ、ポジションどこ?」
「ポイントガード。ダイスケはシューティングガード?」
「ん、なんでわかんの?」
「なんとなく、こないだのシュート見て思った」
アウトサイドからのシュートが苦手なの、ばっちり見られたんだよな。そんで…うん、手取り足取り教えてもらったわけだけど。
なんつーか、おかしいわ。普通に先輩らだってフォーム直してくれる時とかするのに、ジャスティンにされた時はすっごいドキドキした。
「何考えてるか、当てようか?」
ジャスティンがニヤニヤしながら顔を覗き込んできたので、デコピンを一発食らわせる。
ああもう、全部お見通しっぽいよな。
きっと、俺のこの気持ちの正体も、こいつはわかってるんだろう…
「ほら、さっさと食ってシュート練すんぞ!」
「はは、焦らなくても、日本にいる間はいつでも付き合うさ」
ああ、そうか、こいつはいつかアメリカに帰るんだった。
そう思った瞬間、胸に穴が開いたみたいにスースーとした。
熱かったはずの体も、一気にクールダウンしていく。
なんだ、そうか、ずっと一緒にいられるわけじゃないんだ。
飲んでいたジュースの味がしない。さっきまで熱かったはずの体が、どんどん冷えていく。
ただの友達、留学生。期間が過ぎれば帰るのは当然なのに。
「…ダイスケ、約束する」
「は?」
ふいに掛けられた声に俯いていた顔を上げれば、くしゃくしゃと髪を撫でられた。
ああ、やめてくれ。その手が俺の心をおかしくしていくんだから。
けれど、それを振り払えない自分がいて、どうしようもないな。
「州大会、決勝まで必ず進むから」
「…だから?」
「決勝戦、見に来てほしい」
深い碧い瞳に見つめられて、息が詰まる。
そんなに簡単に言うなよ、州大会ってなんだよ県予選か?そこで優勝ってお前それ全国行くって事か?軽く言うなよ、出来るのかお前んとこのチームはそんな強いのか?
言いたい事はたくさんあるのに、どれも声にならない。
真正面から真剣に見据えられて、頷くしか出来なかった。
それから、嬉しそうに笑ったジャスティンの顔と、耳元で聞こえる少し低い声しか覚えてない。
せっかく来た体育館での自主練なのに、まともなシュートは打てなかった気がする。
それもこれもジャスティンのせいだ、うん。
だから。
「…責任取って、決勝戦のチケットもぎ取れよ?」
「Of course.観光がてらデートもな」
「寝言は寝て言え」
「ニホンゴワカラナーイ」
「都合のいい時だけわかんなくなんな!」
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