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無言の愛情

【ジャスティンside】 好きな人が自分の腕の中で無防備に寝ているのに、何もせずに30分も耐えたこの忍耐力を褒めてほしい。 ぽんと肩を叩いて、意識を浮上してくれるように名前を呼ぶと、身じろぎしながら頬を摺り寄せてきて、ぎゅっと抱きついてくる。 正直、かなり辛い。 あれだけ体を酷使させたから疲れて眠ってしまったのはわかる。わかるけれど、これではこっちも辛い。ずっと『wait』と飼い主に鼻先を手のひらで制された犬の気分だ。 「ダイスケ、好きだよ…」 なけなしの理性を総動員して、さらさらの髪を梳くと、ん…と返事をしてくれた。 犯罪者にならないうちにダイスケを送り届けようと、起こさないようそっと背中に背負うものの、ダイスケの家を知らない。 仕方ない、知らないんだから。そう言い聞かせて、ホームステイ先である双子の待つ家を目指してゆっくりと歩き出した。 心地よい暖かさを背中に感じながら玄関のドアを開けると、そこには脱ぎ散らかしてある靴と、点々と落ちている二人分の服。それは浴室の方まで続いていた。うん、なんとなく想像できる。 ダイスケが寝ていてよかった… ようやく慣れたこの玄関で靴を脱ぐという習慣。自分の靴を脱ぎ、背負ったままのダイスケの靴も脱がせる。オレに充てがわれている部屋へ入って、ベッドにそっとその体を横たえた。 「ん……」 少し呻いて寝返りを打つが、そのまままた規則正しく肩を上下させていた。 そのあどけない寝顔を、隣に横になって眺める。 「…So cute」 長い睫毛、薄い唇、シャツの襟元から覗く肌。 一晩このまま過ごすなら、相当な覚悟がいりそうだ。けれど、昼間かなり汗をかいていたはず。シャワーを浴びさせて着替えなければ、疲れも取れないだろう。 さて、この眠り姫をどうやって起こそうか。
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