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見つけていく場所

三者面談当日。一緒に考えられるだろうからっていう学校側の配慮で、オレと創、そして母さんが並んで座る。 白かった紙に書き込まれた文字を、難しい顔した担任がじっと見据えてる。 「…マジで?」 「マジで」 「まあ、予想通りっちゃあそうなんだけどなー」 苦笑いしながら、向かい合った机の上に置いた進路希望調査票。そこには、オレが悩んでいっぱい考えた結論を書いた。 【幼稚園の体操の先生】っていうのが、オレの出した結論。 もちろん、高校の体育の先生とかも考えた。けど、今オレが楽しく感じるのって、子供の頃からずっと同じだったんだ。って事は、今運動が苦手な奴らは、子供の頃から苦手だったって事だろ。だから。 「運動…スポーツは楽しいってのを、小さい頃に知ってほしいんだ」 「…ま、小学生上がる前までにそこら辺の神経は出来上がるって言うしな、その考えでいんじゃね?」 調査票をファイルにしまった菅原先生が、今度は違う紙を取り出した。それは、こないだの中間テストの結果。 特に何も問題ないと思うんだけど。 「んー、お兄ちゃんは数学もうちょい頑張ろうな」 「えへへ、継に教えてもらいます」 「んで、継は国語と歴史頑張れ」 「あー、まあ、はい…ムリ」 ゴツンと頭に食らった鉄拳に悶えながら、再び苦笑いする担任の方を見ると、今度は何枚か写真を取り出して並べ始めた。 「いやーん、創ちゃん超可愛いし!」 よく見たらそれは文化祭の時ので。あ、球技大会のもある。 くっはあ、創マジ可愛い! 「どうぞ、先輩」 「んふふ、ありがと」 実はこの二人、高校の先輩と後輩らしい。ついでに言うと父さんも。父さんと先生がバスケ部で、母さんがそのマネージャーで。しかもこの学校とか、どんだけ地元密着なんだよ… 当時はバスケ人気は高くなくて、女子バスケ部もなかったくらいで、マネージャーの存在がすごく貴重だったらしい。顧問も名前だけだった中で、本当にバスケが好きだった母さんが色々仕切って…いや、アドバイスしてた。 そんな事があったせいで、いまだに母さんに逆らえないって言ってた。まあ、体育会系にとっては先輩の言葉は絶対だもんな。でも、それが菅原先生が今の道を選んだきっかけらしい。 高校時代って、その先までずっと人間関係が続くんだなあ。…オレ達と大介も、こんなふうになんのかな? 「えーと、とりあえずこれで。先輩、これからもよろしくお願いします」 「やあね、何改まって言ってんのよ、こっちこそよろしくね」 写真をしまった母さんが立ち上がって、教室を出て行く。それに続いてオレ達も歩き出すと、後ろから声を掛けられた。 「やっぱり、お前らの居場所はお前らのとこなんだな」 「は?今更だっつーの」 悩む必要なんて、なかったんだよな。どんなに考えたって、結局は創のところに戻ってくる。 オレの居場所は、見つけなくてもそこにあるから。
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