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放課後の教室は少し寒くて、君の手はこんなにも温かい

【創side】 一雨ごとに深まる秋、なんて言葉があるけれど、今年は暖冬と言われているらしく、例年に比べたらまだまだ暖かい。継なんていまだに半袖一枚で登校してる。おれは寒がりだから、長袖とベストを早々に引っ張り出してきた。 99パーセントが同じ遺伝子構造なのに、たった1パーセント違うだけで随分と変わるもんだなあ、と大ちゃんに言われたけど、継は継、おれはおれ。クローンじゃなくて、双子なんだよ。 「悪い、待たせた!」 今日の部活はミーティングだけらしく、おれは教室でお留守番。読みかけの本も残りのページが少なくなってきた頃、ガラガラと勢いよく扉が開いて、大好きな笑顔が現れた。 たったそれだけなのに、肌寒く感じていたのが一瞬にして心が暖かくなるなんて、おれもつくづく単純なんだと思う。 駆け寄ってきた継が、わしゃわしゃと頭を撫でてくれる。なんか犬みたいに扱われてる気がしないでもないけど、これはこれで好きだから、されるがままに撫でてもらう。 ぐしゃぐしゃになった髪を整えるように梳いていた指が、ゆっくりと頬を包み込んで。その手のひらの暖かさが気持ちよくて、うっとりと目を閉じた。 「…なに、誘ってんの?」 「んーん、継の手が気持ちよくて」 「は、天然かよ」 一瞬だけ唇が触れた気がしたけど、でもそんな一瞬じゃあ足りない。 「…手、ぎゅってしていーい?」 「おう、手だけでいいのか?」 「や…」 絡んだ指先はまだ少しだけ冷たいけれど、抱きしめてもらった継の胸の中は、春の陽気みたいにぽかぽかと暖かかった。
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