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黄色い月
【創side】
今日は委員会があって、そのまま継の部活が終わるまで図書室にいた。この時期の図書室は、天気が良ければ暖房無しでも暖かい。
二学期に入ってからは、蔵書の内容が一変した。入り口近くに並べていた小説の類が、大学や専門学校の案内になっていたり、職業についての雑誌だったり、進路に関わるものになっている。
その中から一冊を取って、窓際の椅子に座る。ぱらぱらとページを捲ると、あるページで手が止まった。
「これ……」
広げたのは大学のページ。たまたまなのか運命なのか、開いたのは体育大学のページだった。
…継はああ言ってたけど、なんかそれって継らしくない。確かに、公園とかで小さい子と一緒になって遊んでるのはすごく楽しそうだけど、でもやっぱり違うと思う。
「…おれは、真剣に、でも…楽しくバスケしてる継が好きなのにな…」
ふう、と頬杖をついてため息が溢れた時、図書室の扉が開いた。
見なくたって、足音で分かる。
「継…!」
「悪い、待たせた…ほい、これやるよ」
ニッと笑って隣に座った継が差し出してきたのは、体育館の外にある自販機で売ってるミルクココア。今月に入ってから入荷したみたいで、おれのお気に入り。やっぱり継は知ってたんだね。
ありがとうと受け取ると、そのまま手首を引き寄せられた。
「わっ、けぇ…?」
「…オレは、創と一緒がいい」
「え……あ、これ…?」
ぱたん、と閉じられた本。じっと見つめてくる瞳から、視線が反らせない。
おれも負けずに見つめ返すと、今度は継からため息が落ちた。
「あー…ごめん、ムキんなった」
「継……」
肩口に感じる重みは、継の気持ちなんだろうな。さらさらと頬に掛かる髪を撫でてあげたら、ぎゅーっと抱きしめられた。
ここが図書室で、周りに人がいるのも分かってる。けど、今は継のしたいようにさせてあげたかったんだ。
「…っかんねぇ」
「うん、そうだね…」
おれだって継と一緒がいい。でも、それじゃあ継が輝けない気がする。
継には、いつだって輝いていてほしいから。
「………継、体育大、受けて」
喉の奥から込み上げてくるものを堪えながら、それだけを口にした。
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