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愛言葉

重い瞼を頑張って持ち上げれば、そこには心配そうな顔でこちらを覗き込んでくる継がいた。 視線が絡むと、すぐに嬉しそうに、でもまたすぐに申し訳なさそうな顔に変わる。 「…悪い、ちょっと本気出しちゃった」 「け、っぇ…?」 口の中がカラカラに乾いていて、喉の奥が貼り付いてるみたい。うまく喋れないおれの様子に気付いてくれた継が、ちょっと待ってろと言い残して部屋を出て行った。 あれ、そういえばここ、ソファじゃないよね。いつの間にか継が部屋に運んでくれてたんだ。 きれいに整えられたベッドの上で、口元まで布団を掛けて丸くなってみる。ズキズキとしたこの痛みは、実は嫌いじゃなかったりするんだよね。だって、継がおれをいっぱい愛してくれてる証拠だから。 「ほら、起きれるか?」 すぐにお茶の入ったグラスを持って戻って来た継が、おれの横に腰を下ろす。 優しく髪を梳いてくれるから、ちょっとワガママ言ってみたくなった。 「…ううん、ちょっとムリかも」 じっと見上げながらそう言えば、バツの悪そうな顔でグラスに口を付ける継。 ごめん嘘だよ!…って言う前にそこを塞がれて、冷たいものが流れ込んでくる。こくりと喉の奥に落ちた時に、ようやく自分の状況が理解出来た。 あんなにカラカラに乾いていたのが、今ではすっかり潤ってる。そう思ったら継が離れていき、少し寂しく感じたその瞬間にまた触れてくれるから、今度はしっかりと腕を伸ばした。 「…ん、創?」 「ふふっ、大好き!」 「オレだって、すげえ好きだから!」 脈絡もなく好きだと伝えたって、継はそれを受け止めて、何倍にもして返してくれる。 だから、おれはいつだって愛言葉を口にするんだ。
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