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二人だけの教室
あれからいくらもしないうちにソウが顔を出した。もちろんケイもくっついて来た。
昨夜のうちに作っておいたというサンドイッチを食べて、ダイスケと二人で先に家を出る。少しでも一緒にいたいから。
コンビニへ寄ってから学校へ。教室にはまだ誰もいなかった。
「とりあえず、球技大会は優勝しとかないとな」
ちゅーっとミルクを一気に飲み干したダイスケが、こちらを振り返って座ったまま、オレの机に頬杖をついて見上げてくる。その額にキスを落としたら、一気に真っ赤になった。可愛い。
「優勝するよ、今ここで神に誓った」
「だ、から、日本じゃこういうのしないんだっつーの!」
唇を尖らせて額を抑える姿が可愛くて、ついからかいたくなる。本気だけど。
くしゃりと髪を撫でてやり、改めてその瞳を見つめた。
「オレも、試合に出るからには勝つつもりだから」
「おう、当たり前だろ」
グッと握った拳を突き合わせて、今度はダイスケに誓った。
「じゃあこれ、今日からの練習メニュー」
「…殺す気か」
「はは、サンクス」
「褒めてねえよ」
渡したメモには、今まで見たダイスケの動きを元にした改善点とトレーニング方法など、これから先に役に立つだろう内容。そして、梅原が望んでいるだろうスキルアップのためのトレーニング。
まずはどんな体勢になっても軸を意識してシュート出来るようにならなければならない。そのためにインナーマッスルを鍛えて、体幹を強化する必要がある。
それと、大事なことが一つ。
「ダイスケ、ポイントガードやらないか?」
「………You don't mean it, do you? 」
「I mean it.」
ダイスケに嘘なんか吐くはずがないだろう。
プレイヤーにとって、ポジションを変更するというのは簡単じゃない。けれど、上級生が引退した後にダイスケを中心としたチームを作るつもりなんだろうから、ゲームメイクしてチームを引っ張る存在であった方が良い。
ダイスケはよく周りを見ている。ゲーム中には何度もこちらに視線を寄越したかと思えば、フォワードの動きもしっかりと確認していて、空いたスペースには確実に滑り込んでくれていた。
「向いてると思うけどな」
「…梅ちゃんにも言われた」
「なら話は早いじゃないか」
うーと唸りながら机に突っ伏してしまったダイスケの髪を梳いて、一房取るフリをしてそこにキスしたら怒られた。バレてる。
「その気があれば、オレが全力でサポートする」
「……………うん」
握られた手のひらをそっと開き、指を絡ませる。伝わってくる熱と拍動が落ち着くまでこうしていよう。
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「………You don't mean it, do you? 」
え、お前それマジで言ってんの?
「I mean it.」
もちろん!
みたいな。
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