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【番外編】修学旅行
小学生の息子が修学旅行に行ったので、双子もイかせて、いや、行かせてみました。
中学生のお話です。大ちゃんと創は同じクラスで、継は離れてます。
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【継創】
「…行ったか?」
「おう、オッケー」
真夜中のホテル。見回りの教師が過ぎ去ったのを確認すると、数人が部屋を抜け出した。
別にやましい事をするわけでもなく、ただ親しい友達の部屋に遊びに行って、色んな話に花を咲かせながら夜を明かすだけなんだけど。
修学旅行という特別なイベントのせいで、みんなの気持ちも盛り上がる。
「継、ホントに来たの!?」
廊下を少し進んだ別の部屋。もちろん開いているカギ。そっとドアを押して入り込むと、足音を忍ばせて部屋に入った。
いや、正確には足音を忍ばせた「つもり」だった。
一番手前に敷かれた布団が捲り上がり、自分と同じ顔が暗闇でも見える。
この旅行のために新調したパジャマが、とてもよく似合っていて。
「へへっ、やっぱ分かるか〜」
「継の足音だもん、寝てたってわかるよぉ」
クスクスと笑いながら、おいで?と手招きしながら横にズレてくれる。その空いたスペースに遠慮なく潜り込めば、ふわりと創の香りに包まれた。
隣の布団では大介が爆睡してる。昔からこいつはどこでも寝れる奴だった。
部屋の奥の方では、おそらく誰かが兄弟に借りたのかアダルト雑誌が広げられていて、異様な空気が漂ってる。
「お前らは見ないの?」
「キョーミねえ」
「ははっ、お子様め〜」
アホか。どこの誰かも知らねー女の裸見て何が楽しいんだ?
そんな紙切れよりも、創の方があったかくて柔らかくていい匂いなんだよ!!!!知らねーだろ?教えてやんねーけどな!!!!
「どうしたの?」
「なんも。ほら、早く寝な?」
創はもともと夜更かしは苦手な上に、今日は朝7時に学校集合だった。移動中とかは寝てたみたいだけど、それでも疲れてるだろう。
いつもするみたいに手を繋いで、優しく背中を叩いてやる。
だんだんとオレと創の呼吸が合ってきて、やがて重なった頃、長い睫毛で黒い瞳が完全に隠れた。
「…おやすみ、創」
そっと触れ合わせた唇は、いつもより暖かかった。
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