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素直になれなくて
アトラクションの階段を下りて近くのベンチに下ろされると、先に自販機でジュースを買いに行った創が戻って来た。
「はい。大丈夫?」
「…お前ら、楽しんでんだろ」
「えへっ、まあね」
にっこり笑って継のところへ走って行くと、そのまま抱きついてじゃれ始めた。
なんか、仔猫が遊んでるみたいでまあ微笑ましい光景なんだけど。
あいつらはあいつらなりに葛藤があって、それを乗り越えて今こうして二人でいる事を選び、覚悟したんだろう。
家族で、しかも兄弟でなんて、俺には想像もつかないほど悩んだに違いない。一時期お互いから相談されたりもしたけど、それ以外にも俺に話せない事だって色々あったはずだ。
それを、お互いが素直に気持ちを伝えて、通じ合って。
「…ふう、」
俺はどうなんだろう。
気持ちは通じ合ってるんだと思う。ただ、俺が色んな事に対して臆病なだけで。
あと、恥ずかしい。すげえ恥ずかしい。
あいつらみたいに甘えるとか無理。
手を繋ぎたいとか、腕を組んでみたいとか、頭撫でてほしいとか、抱きしめてほしいとか、ほんとは色々したい。でも羞恥心が邪魔をする。
「…本当に大丈夫か?」
「んー、…っわ?」
隣に座るジャスティンにぐい、と腕を引かれて視界が回る。まるでさっきのアトラクションに乗っていたような感覚。
思わずぎゅっと目を閉じると、優しく頭を撫でられた。そっと目を開けると、逆光で黒くなった人影。
「気分が悪いなら少し休もう、二人は先に行かせたから」
そこで初めて膝枕をされてるのに気付いた。
真上から覗き込んでくるジャスティンの顔が近くて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
けど。
「…というより、オレがこうしたいんだ」
「あっ、の…ちょっ、ちょっとだけなら、いい…」
眩しくないように目元を手のひらで覆われてしまって、ジャスティンの表情は見えないけど、膝が揺れてるからきっと笑ってんだろ。
でも、それでも。こうして触れ合っていられるなら少しくらい笑われたっていいとか思ってしまう。
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