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どうかこのまま、時間よ止まれ
【大介side】
ジャスティンに抱き締められる。
恥ずかしい。嬉しい。もっと近付きたい。恥ずかしい。幸せ。嬉しい。恥ずかしい。
色んな感情が混ざり合って、でも最後に勝つのは幸せな気持ちで。
こいつに会うまで、抱き締められる事がこんなにも幸せで満たされる行為だなんて知らなかった。いつも双子がくっついてんのも、今なら分かる。
「…もっと」
「うん、どうした?」
「いいから、こっち見んな!」
くすくすと笑いながらも、抱き締める腕の力を強くされて、ジャスティンの胸元に密着する。
あ、こいつもすげえドキドキしてるんだ…
聞こえてきた鼓動に、腕の中で抱き締められている事を実感する。
とても心地よくて、嬉しくて、幸せで。
でもそう遠くないうちにこの暖かさがなくなってしまうのも事実で。
熱くなる瞼をぎゅっと閉じて、このまま時が止まればいいと思った。
こいつがアメリカじゃ強豪校の中心選手で、州だかなんだかの選抜メンバーって事は、きっとこんなとこでダラダラ過ごしてていいわけない。けど、俺はこいつの腕から抜け出せない。
ここから離れたら、息が止まってしまうと思う。それくらい、俺にとっては無くてはならない存在なんだ、こいつは。
「ダイスケ?」
急に無言になった俺が気になったのか、密着していた体を離して、顔を近付けてくる。整った顔立ちが、困ったように笑っていた。
じっと見上げて、頬を挟み込むように手のひらで包んだ。
「…お前が俺から腕を離すまで、俺はここにいる」
「それはない」
「だって!お前は」
俺を置いて帰るだろ。
その言葉を発する前に唇が塞がれた。
それは一瞬で、でも永遠で。
時間が止まったみたいだった。
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