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こんなに近くにいるのに、こんなに、傍に、いるのに

今までこんなにも近くにいた人はいなかった。 女の子と付き合った事はあったけど、部活部活の毎日ですぐに振られたし。こうやって一緒に出かけたりする事だってほとんどなかった。 「ずっと、一緒にいるから。離れるのはほんの一瞬だよ、ダイスケ…」 ぎゅっと抱きしめて、そっと頭を撫でてくれる。こんなに暖かい場所は、他にない。 なのに、お前は俺から離れていくんだ。 「ダイスケ、信じて」 額に柔らかい熱が押し当てられる。 不意に左手を取られて、指の付け根に同じ事をされた。 …え、今の、なに、え?ここ、あの…ちょ、え? 一瞬で頭の中がグルグル回って、わけわかんなくなる。 「…そこ、空けといて?」 「………なに、それ、」 「ん?そのままの意味だけど」 再びぎゅっと抱き締められて、もうほんと何がなんだかわからない。 さっき、薬指の付け根にキス、された…よな?え、あれ、そこってなんか大事なとこなんじゃないのか?そんな簡単にちゅっちゅちゅっちゅしていい場所じゃないだろ? 「わ、かんねーよ…」 「わかるまで、離すつもりはないから」 今よりもっともっと傍にいられるなら、わからないままでいよう。 この暖かさがなくなっても、すぐにまた暖めてくれるなら、その一瞬だけ目を閉じていればいいんだから。

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