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わがまま猫にgrooming 1
2017年9月16日 earlymorning
覚醒前の夢見心地の中、誰かに頭を撫でられている感触に気がつく。
こんな風に優しく触れられるのは久しぶりだ。
子供の頃は癇癪を起こして泣き出す度に「蓮は良い子だ」と父に頭を撫でられたものだが、成人済みの男性が頭を撫でられるシチュエーション等そうあるわけがない。
もう少しその感触を味わいたくて、手の持ち主の方へ体をすり寄せると、逆にその手は離れていってしまった。何だか寂しくて子供が嫌々をするように蓮が頭を動かすと、先程までと同じように、暖かい大きな手が蓮を撫でてくれた。
大丈夫だよ、と夢の中で誰かが励ましてくれる。その声に元気付けられ、きっと計画通り進むはずだと安心した蓮は、もう一度眠りについたのであった。
※ ※ ※ ※ ※
「ずいぶん飲んだつもりだったけど」
金城が用意したホテルで目覚めた筧は、体調がいつも通りであることに安堵する。
昨晩の事を思えば二日酔いになっていないのが不思議だが、きっと楽しい酒だったからだろう。
「さて、どうしようか」
予定ではこの連休は台湾で事務所用の物件を内見しているはずだったが、急遽帰国したため、スケジュールが空いてしまった。
仕事漬けの生活だから、たまに休みをとっても寝て過ごすか、持ち帰った書類やメールをチェック等をしてしまう。まとまった休みなど、どう過ごせばいいのか困るぐらいだ。
取り敢えず東京に戻り、溜まっているであろう書類を片付けようと決め、身を起こした筧であったが、捲った布団の中に人の姿を発見し驚いた。
キングサイズの広いベッドで体が触れ合うことがなかった事や、相手が布団の中に潜り込んでいたために全く気づかなかったのだ。
とは言え、誰かと同衾した事を忘れるとは、やはり夕べは相当酔っていたんだと筧は内心苦笑する。
「男の子、だよな」
そっと覗き込んだ寝顔は、白い肌に整った顔立ち、まだ少年といってもいい若い男性のものだ。長いまつげがぴくぴくと震えるのは、目覚めかけているからだろうか?
筧はとっさに、その子の頭を撫でていた。猫のようにまるまって、気持ち良さそうに寝ているから、起こしてしまうのが可哀想になったのだ。
さらりとした黒髪の感触が心地よくて、撫で続けていたら不意にその子が体をすり寄せてくる。
起こしてしまったかと、手を放し様子を伺うと、穏やかだった表情が一転、眉間にシワを寄せ今にも泣き出しそうな顔で、左右に首を振っている。
悪い夢でも見ているのだろうか?
「大丈夫、大丈夫だよ」
小さく声を掛けながら、筧がもう一度優しく頭を撫でてやると、夢の内容が変わったのか、可愛いらしい笑みを浮かべる。
「何だ、この可愛い生物は」
一人悶絶する筧をよそに、その生物は再び寝息をたて始めたのであった。
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