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うそつき猫にgood by
2017年9月17日
年の離れた弟がいる筧は庇護欲が強い。だから初めて見た蓮の頼りなげな寝顔や、別れた恋人の事を辛そうに話す表情に守りたいと強く思わされた。とは言え、筧と蓮は数日間のペット契約だ。
蓮がなついて甘えてくるのも、主人の機嫌を取る為で、真に受けてはダメだと自制していたつもりが、ホテルの部屋に帰り着くと筧の理性は弾け飛んだ。
横抱きにした蓮を寝室に連れ込み覆い被さる。貪るように口付けお互いの熱を握り確かめあった。
嫌がる事なく蓮は応じてくれたが、それが筧と同じ気持ちからなのかは解らない。
もう何年もこんな気持ちになった事がなかった筧は、言いかけた言葉を飲み込んた。
レンタル期間は明日まで。今日は蓮とゆっくり話をしてみようと筧は考えていた。
※ ※ ※ ※ ※
朝まで抱き合った気だるさに二人が目を覚ましたのは昼過ぎであった。それも訪ねてきた客に叩き起こされたというのが正しい。
訪ねてきたのが金城と虎子ママだったにで、蓮に相手を任せ筧はシャワーを浴びた。昔から目敏い金城に蓮との情事を揶揄されるのが少し気まずかったのだ。
「それで、賭けは上手くいった?筧さんを怒らせる事出来たの?」
バスルームの扉を開けると嬉々とした虎子ママの声が聞こえてきた。
蓮が答えているようだが、何を言っているかまでは聞こえない。
「やだ、頑張りなさいよ。蓮の好きなモデルのHIROに会えるチャンスでしょ。金城さんの紹介なら、お友達…それ以上にもなれるかもじゃない」
虎子ママの野太い笑い声が筧の耳に響いた。
成る程、そうゆう裏のお遊びもあったのか…。
連にとって夕べの出来事は本意ではなかったはずだ。
全てを知った筧が取る行動は一つしかなかった。
「HIROに会うために無理しなくても良かったのに…」
手早く身支度を整えた筧は、虎子ママに詰め寄られている蓮に声を掛けた。
「えっ、筧さん、どうしたの」
それが筧の言葉に対するものか手にしたスーツケースをさしてなのか、判断はつかなかったが、もうどうでもよかった。
「金城さん、HIRO のスケジュール1日オフ押さえますよ」
それだけ告げて背を向ける。
「おい、レンタル1日残ってるぞ」
「蓮くんの望むように。金城さんに任せるので、費用は請求して下さい」
振り返る事なく筧は告げる。
「なぁ、筧、チケット押さえてえないんだろ。空き確認してからでの遅くないだろう」
ドアの前まで追いかけてきた金城に、筧は取り乱すことなく笑顔で答えた。
「アメリカでもアフリカでも乗れる便に乗りますよ。ここから離れられるならね」
部屋を出て行く筧にそれ以上誰も声をかけることは出来なかった。
「蓮、賭けの約束だし筧の了承も得られたし、HIRO に会わせる事は出来るぞ」
リビングに戻ってきた金城がそう声を掛けるも、蓮は呆然としていた。
「ねぇ、金城さん、筧ちゃん怒ってたの?てゆーか何で筧ちゃんがHIROのスケジュールおさえられるの?」
虎子ママが不思議そうに尋ねる。
「ああ、HIROのマネージメントは筧の会社がやってるし、それにHIRO は筧の弟だ。しかし筧は怒ると可愛げがなくなるんだな」
面白そうに呟く金城の言葉に、蓮の目から涙が溢れ出したのであった。
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