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第5話

その夜…見たくないとは思うのにテレビに映し出される姿に目が離せなくなる。画面越しに見る卯月はやっぱりカッコよかった… 沢山の報道陣に囲まれ話す卯月はキラキラしてた。あの時貰ったあの指輪のように… 自分との約束が守られないならばこの愛しい人が幸せであるよう願っていよう…そう言い聞かせてなんとか冷静さを保とうとする 「お相手はどなたですか?」 報道陣の質問に画面の卯月は一旦呼吸を整え答える 「幼い頃からずっとずっと側にいる人です。 幼い頃に約束したんです。二十歳の誕生日に迎えに行くから待っていてと。 同じ日に同じ場所で生まれてずっとずっと一緒に過ごしてきた自分のたった1人の大切な人です。 …待たせてごめんね」 それを聞き、溢れる涙を拭うこともせず画面を見つめていた俺を母たちが優しい笑顔で見つめていた。 一頻り泣き一旦自分の部屋へ戻る。奥の方に仕舞い込んだ宝箱をそっと開け中から指輪を取り出す。あんなにぶかぶかだった指輪も今はピッタリになっていた。指に収まるそれを見ながら思わず笑みが零れた。どんな高価な宝石でもこれには敵わない気さえしてくる。 その記者会見から数時間後家のインターホンが鳴る。玄関にずっと会いたかった大好きな人が立っていた 「ただいま。藤。長いこと待たせてごめんね」 あの日のように思い切り胸に飛び込んだ。あの時みたいに一緒に倒れることもなくしっかり俺を抱きとめてくれた愛しい人はあの時と同じで優しく微笑んでいた。俺は胸に顔を埋め涙を流した。 今日の涙は哀しいものじゃない。哀しくて泣いていたあの頃の自分に伝えたい。 その涙は嬉しい涙になるからって… 「おかえりなさい…卯月…」

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