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第4話「初めての.....」

ナオキと付き合って1ヶ月ほどが過ぎた。 付き合ってからは週に2回、多いときは4〜5日会っている。 会うのはだいたい晩メシどき。 ナオキは平日休み、俺は土日休みなので、丸1日会える日は今のところほぼないが、夜ならわりと時間は合せやすい。 ある日、ナオキから「めずらしく土日休みが取れた!」と意気込んだLINEがきた。 金曜日の夜からうちに泊まりに来ることになった。 ナオキとは初めてのお泊まり。 「お泊まりということは.....」 当然のように初夜の営みを想像してしまう。 似合わないから遠まわしな言い方はやめてここは潔く『セックス』と言わせていただく。 セックス! 男女のセックスの場合は「やること」と「役割」が決まっている。 だが男×男の場合は「役割」....つまり、俗に言うタチかウケかが問題である。 俺はリバ。 タチも出来るしウケもできるのがリバ。 (リバーシブルからきてるらしい) 俺の場合、正しくは「ウケ寄りのリバ」。 ややこしいが、タチもウケもできるが、ウケ率が高のでウケリバ。 俺は今まで2人の男と付き合った。 体の関係だけの男もいた。 思い出すと俺はウケが多かったし、求められてる感じが幸せだった。 いわゆる女性脳というやつなのだろうか? 男同士でセックスとなるともうひとつお互いに知っておかなければいけないのが、「入れる派」か「入れない派」か。 意外と最近の若い子は「バニラ」が多い。 「バニラ」とは、挿入しないセックスのこと。 どうしてバニラと言うのかは実はよく知らない。 バニラセックスタイプだと、触り合いや口でするのがメインで、手でイカせるのがほとんど。 俺は断然挿入ありのセックス派なので、バニラは物足りない。 さて。 ナオキはタチかウケか? 入れる派か入れない派か? ちなみにナオキとはキスまで終わっている。 フレンチじゃなくてディープな方。 場所は居酒屋のエレベーターの中。 誰かに見られるんじゃないかというハラハラと、長くしていられないもどかしさ。 ついに今夜、その先へと進展するのかもしれない。 ナオキが泊まる当日、俺は仕事を出来るだけ早く切り上げ、急いで家路に着いた。 なぜ急いだのかわかる? 部屋は前日までに掃除は終えていたし、もともと物が多い方ではないので、そんなに散らかってはいなかった。 ではどうして急いで帰る必要があったのか。 答えは簡単だ。 「身体の準備」のため。 仮にナオキがタチで、入れる派だったとする。 もしそういう雰囲気になっちゃった時に「身体の準備」ができてなかったなんてことにならないように。 準備というのは、つまりお掃除。 男同士の挿入が伴うセックスは、ご存知の通り後ろの穴を使う。 BLマンガじゃ何事もなくサラっと挿入しているが、よく考えてほしい。 出る用の穴に入れるのだ。 しかも女と違って自力で濡れたりしない。 お掃除したり色々と下準備があるのだ。 万が一に備えてシャワーやトイレを行き来して準備にふける。 ナオキとのエッチを想像するだけで膨らみそうになる股間に、落ち着けと「待った」をかける。 「20時半頃到着するよ」と、仕事を終えたナオキから連絡が入る。 うちの最寄り駅で落ち合う約束をしていた。 身体の方は準備万端。下着も履き替えた。 これで何が起こっても安心だ。 待ち合わせたあと、駅付近で軽くご飯を済ませ家路につく。 駅から家までは割と大きな通りをひたすら真っ直ぐ歩く。 ゆるやかな坂になっており、帰りは登りなので会話しながらだとやや息があがる。 「タケル、いつもこの道通って帰るん?」 「そだよ。行きはいいんだけど、帰りがしんどい」 この微妙な坂は仕事で疲れてきった身体にはこたえる。 歩きながら触れるナオキの指先。 人目があるので堂々とは繋げない手。 男同士ってそのへんが残念だといつも思う。 触れる手と手は、一瞬だけ指を絡ませたりしてお互いの「好き」を確かめる。 心なしか緊張している自分に気づく。 息が上がってるのか、この幸せに酔いしれてるのか、それともエッチを期待して心弾んでいるのか。 全部かもしれない。 きっとそうだ。 15分ほど歩いてようやく家に到着した。 「ちゃんと道覚えた?」 「駅から一回も曲がってないけど(笑)」 「次からひとりで来れる?」 「カンペキ」 鍵を開け、俺が先に玄関に入る。後に続いてドアを閉めるナオキ。 「鍵、内鍵も閉める?」 「そっちはいいよ、ありがと」 靴を脱いで先に部屋に上がろうとすると、ナオキは俺の手首を掴み、自分に引き寄せるようにして俺を抱きしめた。 「やっとギュゥできた。ずっとしたかった」 「.....うん、俺も」 ここは誰にも邪魔されないふたりきりの空間。 部屋に入るまでガマンできなかったのか、玄関だというのに彼は俺にキスをした。 俺もナオキを抱きしめ返し、エレベーターの中では出したことのない、力が抜けそうな吐息を漏らす。 持っていたバッグもそのまま床に落とし、一瞬でキスに夢中になった。 首の角度を交差しつつ、喉の奥に届きそうなくらい舌を絡めた。 俺の背中や首の裏に回したナオキの手は、徐々に下に降りていき、腰やお尻を撫で回す。 お互い身体中をまさぐり合って、これ以上抱き合えないくらい全身を密着させる。 足の付け根あたりにナオキの膨らみを感じる。 彼の手は俺の膨らみにも伸びてくる。 俺の膨張した股間を確かめると、唇を吸う力が程よく強くなる。 膨らみを覆われたり撫でられたりしているうちに、ふたりの息づかいは次第に強く早く刻み始める。 荒い鼻息と吐息に混じって、唇と舌が絡み合ういやらしい音が玄関中に響き渡る。 もうここで服を脱いではじまってしまいそうな勢いだった。 唇を休ませ、おでこを合わせる。 息を整え彼が小さく呟く。 「ヤバい。エッチしたい」 「俺も」 「ここで?」 「やだ.....ベッドで」 俺はナオキの手を引き、床に落としたバッグもそのままに、照明もつけず廊下を進む。 ダイニングキッチンを抜けると奥の部屋にはベッドがある。 ベッド前でもう一度改めて向かい合い、キスをする。 さっきの続きが始まった。 彼とのキスは俺を狂わせた。 彼もそんな風に見えた。 今夜、ふたり初めて性をむきだしにして愛し合った。 つづく

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