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第2話

「ん……はぁ……雅己っ」  その夜、慎吾は雅己のマンションで発情期を迎えた。ダイキに言われた通りに雅己を信じ、素直な気持ちで話し合おうと部屋に訪れた直後、抑制剤が完全に効力を失った。  その場に崩れ落ち、自分ではコントロール出来なくなった慎吾を寝室へと運び、雅己もまた彼が発する香りに抗う事も出来ずに早急に洋服を脱ぎ捨てた。  αを狂わせる慎吾の甘い香りが部屋中に充満し、白く細い腰をくねらせて強請る煽情的な姿は、雅己の理性を突き崩すまでそう時間はかからなかった。  狼の血を引く雅己は本能のままに鋭い牙を剥き出して、慎吾の体に貪るように口づけた。  普段は大人しく冷静な彼がここまで豹変することなど今までなかった。  慎吾もまたいつになく体が疼き、最愛の者の種を求める子宮がキュッと収縮を繰り返していた。  その甘い痛みに声をあげ、雅己の背中に幾筋もの爪痕を残していた。  α特有の長大なペニスが膨張し、いつ暴発してもおかしくないというタイミングで、雅己はベッドサイドに置かれたナイトテーブルの抽斗を開けてコンドームの箱を取り出した。 「いや……っ!雅己……の精子、欲しい。奥に……出して」  何かを恐れるように薄い唇を戦慄かせて声をあげる慎吾を上から見下ろす。  彼の求めているものは重々承知の上だ。しかし、雅己にはその望みを叶えてやることが出来ない。  強気な瞳を潤ませ、今にも泣き出し出しそうな慎吾に、雅己は何も言えなくなった。 「慎吾……」  何かに囚われるように、牙をギリリと鳴らしながら躊躇う雅己の手から、不意にその箱を細く長い指先が奪った。  驚きに雅己が顔をあげると、目の前には薄闇に輝くような白いスーツを着た男が立っていた。  歳は自分とそう変わらない。しかし、何より驚いたのはその相貌だった。  まるで鏡で自身を見ているかと思うほど、その男は雅己に似ていた。 「あなたは……っ」  セキュリティも万全であるこのマンションの部屋に、他人が住人の許可なく入る事は出来ない。  まして雅己の部屋は高層階であり、窓やベランダから忍び込むことは不可能だ。  普段、取り乱すことのない雅己の声は慎吾の耳に届いていた。息を呑み、慎吾の腰を掴んだ手に力が入ったのが分かる。 「――もう、必要ない。俺がいるから」  静かにそう言った男の声に、雅己は大きく目を見開いた。 「に……兄さんっ!?」  そこにいるはずのない者――いや、この世にはもう存在していない者の姿に息を呑んだまま動けなくなった。  そう、白いスーツに身を包んだ男――ダイキは雅己の双子の兄であり、二十二年前に川で溺れた雅己を助けるために川に飛び込み、そのまま帰らぬ人となってしまった。  その彼が今、雅己の目の前に姿を現したのだ。 「ホントに……ダイキ、なのか?」 「――ったく、なんてザマだ。俺が継ぐはずだった土地も財産も、全部お前にくれてやったと思ってたのに。それなのに、一番大事なものが足りないなんて……。その挙句に、可愛い恋人を不安がらせるとか……あり得ねぇ」  ダイキは乱れた前髪の隙間から雅己を睨みつけた。  雅己がセックスの度にコンドームをしていた理由――それは、自身のαとしての生殖能力が一般的なαの半分しかなかった事。 それが分かったのは精子検査を受けた時だった。精子の数も勢いも問題はなかったのに、一番肝心な性質に問題があったのだ。 考えられる理由はたった一つだけ。それは雅己には双子の兄がいたことだった。一卵性だった二人はその能力を二分してしまう形で生まれた。αとしての能力を完全な形で発揮するには二人一緒でなければならない。 実に特殊で、今までに事例がなかったことから、精子検査を依頼した機関にも興味を持たれ、危うく検査対象者として実験室に監禁されそうになった。 慎吾と付き合い始めて間もなくだったこともあり、言い出せずに二年という月日が経ってしまっていた。 互いが“運命の番”であるというということは間違いはない。 しかし、ダイキがいなければ生殖能力は完全なものにはならない。 この世にいない男の精子をどうやって手に入れろと言うのか……。 それ故に、彼を幸せに出来る自信がなかった。 婚姻し、子を望む慎吾……。それも満足に果たせない自身に劣等感を感じたまま、彼との関係を続けてきていたのだ。 ある時などは別れることも真剣に考えたくらいだ。 でも、慎吾はそんな雅己を愛してくれた。不信感を抱いている事は薄々感じてはいたが、それを口に出すことは今までになかった。 その不安が、昨夜ついに爆発した。 ハッキリと答えを出せない雅己に苛立ちを隠すことなく、声を荒らげて部屋を出て行った慎吾の背中がやけに遠くに見えたことを覚えている。 (もう……本当に終わりなのかもしれない)  今朝も目を合わせることなく、言葉も交わすこともなかった。  それなのに、慎吾はこの部屋を訪れた。 「ちゃんと話そう」  そう言ってくれた彼の優しさに涙が出そうになった。そして……突然、慎吾は発情した。  彼のスーツの上着のポケットから落ちたピルケースの中身を見て雅己は愕然とした。 抑制剤を服用してまで、自分の発情を抑え込んでいた事を知ったのだ。 艶めかしく誘う慎吾の香りに、雅己の中の箍が外れるのにそう時間はかからなかった。 でも――。 雅己はわずかに目を伏せ、体の下で苦しそうに喘ぐ慎吾を見つめた。 「――慎吾はお前との幸せを望んでいる。俺は……その手助けをするだけだ」 「ダイキ……」 「ノルマ達成しないと転生出来ないんだよ……。いつまでも天使でいられるわけじゃない。このままだと、俺……消滅しちまう。――なあ、雅己。俺を……助けてくれ」 「え……?天使……?」 「これが最後の仕事なんだよ……。人助け……させてくれ」  幼い頃から常に自信に溢れ、怖いものなどないと言っていたダイキが初めて見せた弱さに、雅己は胸の奥がギュッと掴まれるような痛みを感じた。 もとは一つだった魂が二つに分かれただけ。それぞれに体を持ち、意志を持って生まれた二人。 だが、その本質は繋がったままなのだ。だから、苦しみ、悲しみ、そして悩む……。  ダイキの苦しみは雅己の痛み、雅己の痛みはダイキの傷になる。 「昼間、慎吾と話した……。俺の姿を見える人間ってそういない。でも……こいつは見えた。それって、俺の分身である雅己と繋がってるって証拠だろ?だから、決めた……。俺の種を慎吾に託すことをな」 ダイキは身につけていたネクタイを勢いよく引き抜き、その場で素早くスーツを脱ぎ捨てると、すでに力を持ち始めている長大なペニスに手を添えた。 「――準備は整ってる。あとはお前の承認だけだ。俺と……契約するか?」  真っすぐに雅己を見つめたダイキの空色の瞳が強い光を湛えて輝いた。  その眩さに目を細め、雅己はゆっくりではあったが力強く頷いた。 「ダイキ……。俺たちの子種を慎吾に託そう」 「ああ……。慎吾なら大丈夫だ。お前が選んだ“運命の番”だからな。――契約成立だ」  低い声で呟いた瞬間、ダイキの背に大きな翼が広がった。  純白の羽を散らし、眩いまでに輝くその翼を一度だけ動かすと光の粒子と共に闇に消えた。  しなやかな筋肉を纏い、無駄なものなど何もない白い体を晒し、雅己に微笑んだダイキは手を添えたペニスを慎吾の口元に運んだ。 「――慎吾、舐めて……。聞こえてただろ?俺は雅己、雅己は俺……。出来るな?」  顔を横に向け、ぼんやりとベッドサイドを見ていた慎吾だったが、目の前に差し出された雄々しいモノにうっとりと蕩けた表情を浮かべ、そのペニスに手を伸ばし躊躇なく赤い舌先をそっと伸ばして大きく張り出したカリの部分を下から舐め上げた。 「おい、雅己!ボーっとしてんなよっ。慎吾が欲しがってる……っ」 「え……?あぁ……」 慎吾の膝裏に手をかけて大きく開かせると、ピンク色の蕾はヒクヒクと収縮し雅己を待ち焦がれていた。 「――雅己、ちょうだい。早く……欲しいっ」  自身の指で硬く尖った乳首を弄びながら欲する慎吾の声にハッと我に返る。  すぐ近くには死んだはずのダイキがいる。彼のペニスに躊躇なく舌を這わす慎吾と交互に見つめる。 「おいっ!何を戸惑っている?何の為に俺がここに来たか分かってるだろ?もう彼を苦しめるな……。お前を愛してるからこそ、子を成したいと望んでいるんだぞっ」 「ダイキ……。だって……。俺は……あなたをっ」 「――お前のせいで死んだんじゃない。俺はお前が助かればって自ら望んだことだ。お前は生きて、コイツと……幸せになる。運命は……変えられない」 「ダイキ……」 「黙って、さっさとイカせてやれ!そして……番の証をつけろっ」  ダイキは吐き捨てるように言うと、ベッドに片膝を乗せて慎吾の顔を引き寄せ、自身のペニスを彼の喉奥に突き込んで腰を前後に揺らした。  シーツを掴むために手放した慎吾の胸の突起を指先で捏ねてやることを忘れない。 「ぐぁ……が……あぁ……っ」 「ほら、ちゃんと咥えろよ。約束通り、お前を孕ませてやるからな」  ダイキの背中から、見えない翼から零れ落ちた純白の羽が散らかる。  汗で濡れた慎吾の肌に張り付いては、シーツに落ちていく。 「おいっ!雅己っ」  乱れた髪の隙間から睨んだダイキの苛立った声に弾かれるように、雅己はビクンと大きく跳ねた自身のペニスに手を添えると、慎ましく待ち受ける慎吾の蕾に先端を一気に突き込んだ。 「んあぁ……はぁ、はぁ……っ!」  衝撃に腰を浮かせた慎吾はダイキのペニスを口に含みながらも、最愛の恋人の名を呼んでいた。 「雅己……きも、ち……いいっ」  ググッと腰をせり出し、灼熱の楔を奥へと沈めていくと慎吾の中が蠢動し、さらに奥へ奥へと誘う。  薄いゴム一枚隔てていないだけでこれほど違うのかと瞠目したまま、雅己は慎吾の艶めかしい体を愛撫しながら長大な楔を根元まで打ち込んだ。 「あ……イク……イッちゃうっ!」  ビクビクと体を痙攣させて、普段の彼からは想像出来ない程、甘い嬌声をあげながら白濁を吐き出す。  最愛のαに与えられる快感は何物にも代えられない。 「おいおい……。まだ突っ込んだだけだろ?」  ダイキは慎吾の唾液で濡れたペニスを口から引き抜くと、快感に荒ぶる呼吸を落ち着かせようと、牙を剥き出しフーフーと息を吐き出している雅己を見た。 (そうだ……。本能を呼び覚ませ)  一卵性の双子としてこの世に生を受けたことは罪ではない。むしろ自身の分身とも言える兄弟が存在することを誇りに思えばいい。  もう、何も怖いものはない。ダイキは優し気な笑みを浮かべながら雅己の頬に手を伸ばし、そっと包み込んだ。 「――大丈夫。お前は一人でも大丈夫だ。俺の力、全部お前のモノになるから」 「ダイキ……」 「慎吾は俺たち二人の花嫁だ。だから……いつも一緒にいる」  ふっと表情を和らげた雅己を見つめ安堵の笑みを浮かべると、ダイキはその体をベッドに乗り上げ、身を屈めて精液で濡れた慎吾のペニスを口に含んだ。 「いやぁ……あぁ……あ、あっ……!気持ちいい……変に、なるぅ~」  前後から与えられる快感に、頭を激しく左右に振りながら声を上げる慎吾の体からより一層濃い香りが放たれる。番を縛り付け、絶対に離れさせない魅惑のフェロモン。  その香りは雅己だけでなく、同じ体質を持つダイキの理性をも狂わせる。 「お前を壊すのも、幸せにするのも俺たちしかいない。全部、委ねろ……」 「ダイキ……さんっ。んはぁ……あぁ……また、イッちゃう……んあぁぁ!」  ビクビクと体を跳ねさせた慎吾が中にある雅己の楔をキュッと締め付け、腰を振っていた彼はグッと眉を顰めた。込み上げる射精感を必死に抑え込みながら、慎吾のいい場所を何度も擦りあげる。  ダイキの口内に吐き出された大量の白濁は彼の唇の端を伝う。舌の上にある粘度のあるそれをゴクリと呑み込んで、手の甲で口元を乱暴に拭った。 何度イっても萎えることを知らない慎吾のペニスの先端からは次々と透明な蜜が溢れてくる。  それを舌先で掬うように舐めながら、ダイキは汗を滴らせながら腰を振り続ける雅己をチラリと見上げた。  彼の様子からして絶頂は近いようだ。 「――そろそろ、イクぞ。慎吾……っ」  案の定、低く掠れた声で呻くように呟いた雅己に、慎吾は唇を震わせて声をあげた。 「来て……。雅己の……いっぱいちょうだい!」  誘うように目を潤ませた慎吾に、ダイキはその言葉を封じるように唇を塞いだ。口内に残る彼の蜜と唾液が混じり合ったものを口移しに彼の中に流し込む。それをゴクリと音を立てて呑み込む慎吾の色気に眩暈がした。 (雅己が惚れた理由……分かる気がする)  発情期のΩは普段の姿からは想像出来ないほど淫らに変貌を遂げる。  その相手が最愛の者であれば尚更、その色香は増しαを自分に縛り付ける。  慎吾もまた例外ではなく、雅己を――そしてダイキを虜にしていく。 「あぁ……。イク……ッ。イクよ……。――う、ぐあぁぁっ!」  雅己が咆哮にも似た声をあげて腰を一際奥に突き込んだ瞬間、慎吾の中で灼熱が弾けた。  最奥を濡らす奔流を受け止めて、シーツから背中を浮かせて慎吾は甘い声をあげた。  α特有の長い射精を終え、まだたっぷりとした質量を保ったままのペニスを引き抜いた雅己は息を弾ませながらすぐそばにいるダイキを見つめて微笑んだ。 「――兄さん。――お願い……します」 「出来ることなら一緒に突っ込みたいほどエロい体だな……」 「それは慎吾に負担になるでしょう……。でも、慎吾は俺たち二人に愛されることを望んでいる」 「ちょっと特殊ではあるが……。俺たちは二人で一つだ。だから慎吾もまた俺たちの花嫁って事でいいんだろ?」  ダイキの言葉に雅己はフッと喉の奥で笑うと、彼の頭を引き寄せて舌を絡めた。  何年ぶりのキスだろう……。双子である兄弟が互いに愛し合っていたことは、ダイキが亡くなってからも雅己の胸の中に厳重に仕舞い込まれていた秘密だ。  ピチャピチャと水音を立ててキスを繰り返し、銀色の糸を引きながらゆっくりと唇を離す。  意識が朦朧とし、焦点も合わない慎吾の体をうつ伏せにし腰だけを高く持ち上げると、雅己の楔の太さを物語るようにぽっかりと開いたままの蕾からトプリと精液が溢れた。それを指先で掬いあげたダイキは蕾の中に押し込んで、蓋をするかのように自身の楔を突き込んだ。 「ひぃっ!ひゃぁぁぁぁ!」 「――くっ!ヤバいな、これ……。持っていかれるっ」  グッと歯を食いしばったダイキに、まるで自慢するかのように目を細めた雅己は、愛液に濡れたペニスを慎吾の口元に近づけた。 「慎吾……。ダイキのチンコに感じたら怒るよ?」 「い……やぁ、雅己……それ、無理……っ」  悪戯に嫉妬心を見せつける弟に苦笑いしながら、ダイキは根元まで一気に突き込んだ。  ビクンッと体を跳ねさせて射精することなく絶頂を迎えた慎吾に、雅己はムッとしてわずかに開かれた唇にペニスを捻じ込んだ。  おずおずと顔を上げて雅己のペニスに舌先を伸ばす慎吾の乳首もまた、シーツに擦れることでより感度を高めていく。 「お仕置き……。ちゃんと舐めて」 「雅己、お前って意外と鬼畜っ」 「ダイキがいけないんだろ?」 「どっちに嫉妬してるんだよ……お前」 「ん……あぁ……。両方に決まってる」  上下の口を双子の兄弟に犯された慎吾の昂ぶりは尋常ではなかった。  ジュルジュルと音を立てて雅己のモノをしゃぶり、下後ろから激しく最奥を突き上げるダイキの楔に翻弄される。  今までにこれほどの快感があっただろうか。体がバラバラになりそうなほど辛いのに気持ちがいい。  ダイキの激しい突き込みに互いの肌がぶつかる音が部屋中に響いた。  その音を聞きながら程よくしなった背中を撫でた雅己は、汗に濡れた慎吾の襟足の髪を指先で払いのけた。 そして、露わになった慎吾の白い首筋に顔を寄せると狼の鋭い牙を突き立てた。 「あぁぁっ!」  薄い皮膚に牙が食い込み血が滲んでいく。その血を舌先で舐めながら、腰を振るダイキを見上げた。 「俺の伴侶だからね……」  狼の血を引く金色に光る眼をすっと細める。その表情に嫉妬心を覗かせたダイキは、汗を滴らせてより激しく腰を突き込んだ。  ダイキの空色の澄んだ瞳が金色に輝き始める。天使になり、もう本来の血は二度と目覚めることはないと思っていた。  しかし、愛する弟と共に極上のΩである慎吾と繋がった事で、再び本能が動き始めたようだ。  歯茎が疼き、象牙色の鋭い狼の牙が伸び始める。 「ダイキ……。我が同胞……」  慎吾の血で濡れた唇を舐めながらうっとりと見つめる雅己に、ダイキは綺麗な弧を描いた唇で微笑み返す。  慎吾の細い腰をさらに強く押さえ込み、汗を滴らせて突き込むと、悲鳴のような嬌声が放たれる。 「ひぃぃ……やぁぁん!」 「オッサン天使をナメるなよっ。おらぁ……っ」 「やらぁ……らめぇ!壊れちゃう……っ、あ、あ、イク……イクッ」  栗色の髪を乱した慎吾は顎を仰け反らせて、シーツを掴み寄せた。 「――そろそろイっとくか。これでαの力は一つになる……」  兄弟共に薄い筋肉を纏った体は年相応――には見えない。激しい息遣いと蕩ける様な大人の色香、そして何よりも慎吾を翻弄させる激しいまでの快楽への誘い。 「出すぞ……。天使の精液……たっぷりこの腹に注いでやる」 「あ、あぁ……気持ち、いいっ!ダイキさん……あ、あっ!ひゃぁぁぁぁ!」 「ぐあぁぁっ」  ダイキが叫びながら慎吾の首筋に牙を立てる。皮膚を破り赤い血を溢れさせたまま、激しく痙攣を繰り返す。  内壁を叩く奔流もまた、慎吾の最奥をしとどに濡らした。慎吾の中で、今までなかったはずの器官がゆっくりと目を覚ますのを感じた。  二人の精液を湛えたその泉に新たな命が芽生え始める。  胸を喘がせたまま気を失った慎吾の蕾からペニスを引き抜いたダイキは、雅己の顔を引き寄せてその唇に自身の血で濡れた唇を重ねた。  クチュリと音を立てて唇を触れ合わせたまま、呼吸を整えるダイキはゆっくりと言葉を紡いだ。 「――発情期間は一週間ある。二人でゆっくりと慎吾を愛そう」 「ああ……。俺たちの三人の愛の結晶を作ろう」  唇を離したダイキと雅己はぐったりとシーツに沈んだ慎吾を挟むようにベッドに横たわると、意識のない彼の上気した肌に何度も口づけた。 「番の証は絶対。俺たちの花嫁だ……」  汗ばんだ慎吾の肌はしっとりと濡れていた。 それを舌先で味わうように貪るのは、金色の瞳を持つ双子の狼だった。

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