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第44話

「……」 「……」 とても気まずい……。 昼食の時から、蓮くんの様子がおかしいと思っていた。 勇気を出して、体調でも悪いのか聞いてみたが、「別に」と冷めたような返答をされるだけで何も分からない。 午後の勉強も、夕食も入浴も終えたぼく達。 さっきまで4人一緒に楽しく部屋で過ごしていたけど、山本くんは班長会議に、敦くんは飲み物を買いに出て行ってしまい、2人きりになってしまった。 昼の気まずさから、敦くんに「ぼくも行く!」と言ったが、それなら一緒に買ってきてあげると返されてしまい……。 いつものぼくなら、蓮くんとふたりきりになれて喜ぶはずなのに、今はこの部屋の静けさから、違う意味でドキドキしている。 ーーガサッ。 「っ!!」 ちょっとした衣擦れ音だけでも、反応してしまう。 この気まずさから逃げるように、目的も無く鞄の中身を整理し続けていると、とある物に視線がいく。 (このクッキー……ここに来る途中のバスの中で、蓮くんと食べたやつだ) クッキーを渡した時の蓮くんの笑った顔を思い出す。 また、あの太陽みたいにキラキラと輝く笑顔が見たい。 「あのっ……!」 「なぁ」 勇気を出して声をかけたら、蓮くんと被った。 「あっ、先にどうぞ」 「じゃあ……俺、外行ってくる。多分、消灯に間に合わないと思うから、バレないように合わせといて」 そう言って蓮くんは立ち上がると、扉に向かって歩き出す。 「行かないでっ!!」 考えるよりも先に、言葉と手が彼の元に伸びていた。

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