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第43話 sideR

「なぁ、隣いい?」 「……あぁ」 受験、就職組に分かれての勉強会。突然声をかけ、隣に座って来たのは、今朝から俺のことを睨みつけているなずなの友人だった。 「昨日の続きからいくぞー。プリント3枚目を見てーー」 担当教師の声が子守唄代わりになり、自然と欠伸が出てしまう。 (わざわざこんな所まで来させて、勉強なんてしなくていいのに) 正直怠い……なんて思いなが、右から左へ聞き流していく。 ーーコツコツ。 早く終わることだけを考えていると、隣の席の三浦が指で机を叩き俺を呼ぶ。 「なぁ、この時間怠くね?」 「……俺もそう思ってた」 「ははっ、だよなー」 小声とはいえ、教師にバレると面倒なので互いに正面を向きながら話す。 「なぁ、あの先生って実はヅラらしいぜ?」 「ふーん」 こん感じで、他愛もない話を続けていた。 まぁ、基本的に話すのは三浦で、俺は相槌をうってるだけだけど。 「……で、ここからが本題な」 いきなり話題を変えてきた三浦。今までと変わらず正面を向いたままなので表情は見えないが、明らかに空気が変わったことが分かる。 「今朝のことなんだけどさ……なずなになんかした?」 そう言って、三浦は胡散臭い笑顔で俺の方を向く。 「……さあ。特に思い当たることとかないけど」 「ふーん、なら良いけど。……じゃあこれは、俺の独り言だから気にしないで。あいつを困らせたり、悲しませる奴は……許さないから」 「それ、どういーー」 「こらそこー!ちゃんと前向いて、話を聞けー!」 「はぁーい。すみませーん」 お前に何が関係があるんだ。 何でそこまで、お前がなずなに関わるんだ。 言い返したい言葉はいくつかあったが、タイミングよく教師に遮られ、静かに飲み込む。 隣では、何食わぬ顔で……いや、先程よりも良い表情をした三浦が黒板を見ながら授業を受けている。 (……くそっ。俺が何したっていうんだよ) よく分からない苛立ちをぶるける場所がなく、俺のイライラは募っていくばかりだ。 教師の声も相変わらず耳に入ってこないし、プリントの空欄は埋められることなく、1日が過ぎていった。

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