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第45話
ーードンッ。
背中の痛みと共に訪れる、何かにのしかかられたような重み。
背中に片手を伸ばし、撫りながら目を開くとそこには、鼻先が付くほどの距離に蓮くんがいた。
「……悪い。すぐどく」
甘い香りと共に顔にかかる蓮くんの息。
いつものぼくなら、蓮くんかっこいい!という気持ちでいっぱいいっぱいになっていただろう。
でも今はそんな気持ちよりも気になることがある。
背中をさすっていた手を、蓮くんの頬に伸ばし優しく撫でながら問いかける。
「蓮くん……なんで泣いてるの?」
「……は? 俺、泣いてないけど」
「……ううん。心が泣いてるよ」
ぼくが呼び止めたあたりからかな……?
蓮くんはとても悲しそうな、辛そうな顔をしていた。
もしかしたら、ぼくの勘違いかもしれない。だとしたら、相当失礼なこと言ってるよね。
……でも、彼の心を少しでも軽くしてあげられるんじゃ?と思い、自分を信じて問いかけてみたんだ。
ーーガチャ
「ただいま〜……って、お前らなにしてんの?」
飲み物片手に部屋に戻ってきた敦くんは、部屋の空気を感じ取ってなのか、普通だったら驚くこの光景に優しい声で尋ねてくれる。
「ぼくが転びそうになったところを、蓮くんが助けようとしてくれたんだけど、2人で転んじゃった」
なにも言わない蓮くんの代わりに、ぼくが答える。
頑張って身体を動かし、蓮くんの下からすり抜けると、「手伝うよ」と言って飲み物を受け取るために敦くんの元に行く。
「……お前が、行かないでって真剣な顔で俺を呼び止めたから……」
通り過ぎる時、蓮くんの口から小さく聞こえた言葉。
急いで振り返るが、ぼくたちに背を向けるように座り直していたため、表情が見えず何を考えていたか読み取ることはできなかった。
ただ、少しだけ……ほんの少しだけ、蓮くんの心に近づけたような気がしたのは、ぼくの勘違いだとは思いたくないーー。
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