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第47話 sideR

普段から眠りは浅い方なのに、合宿中1日だけ深い眠りにつけた日があった。 部屋を出ようとした俺を呼び止めたなずなと、バランスを崩して倒れ込んだあの夜だ。 何かある度に思い出してしまう母親の事。眠っていたから記憶が曖昧だが……俺はあの夜も魘されていたんだと思う。 正直あの日は、「行かないで!」と俺の腕を掴むなずなの必死な姿が、母親が男と出て行く時に俺がした行動とシンクロして見えたからだ。 問題はその後。 暖かいぬくもりと程よいリズムを背中から感じた俺は、それからの記憶が全くない。 目が覚めた時には、いつもと同じ格好で横になっていて、朝を迎えていた。 あれから何度かなずなとは目が合うが、その度に優しく微笑んでくる彼の表情に、違う意味でドキッとするだけで、あの日何があったのかは……未だに分からない。 勿論なずなと話す機会なんていくつもあった。 しかし、あいつの口からあの夜のことが出ることはない。 俺の思い過ごしなのか、気を使って何も言ってこないだけなのか……。 ーー正直俺は、後者だと思ってる。 帰りのバスの中、隣で真剣に読書を続けるこいつの横顔を盗み見しながら、俺はそんなことを考えていた。 格好悪い所は人に見られたくない。 過去を知られ、哀れな目で見られたくない。 でもーーなずな、お前になら全てを曝け出してもいいって思ったよ。 お前なら、俺の辛い過去ごと全てを包み込んでくれて、言葉では言い表せないようなこの、心の奥の冷めきった部分を溶かしてくれるんじゃって……そう考えるのは、俺のエゴかな。

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