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第49話

「蓮くんっ、ごめんねっ……!」 「いや、大丈夫」 屋上の扉を開け、すぐさまフェンスに寄っ掛かりながら座る蓮くんの側へと駆け寄る。 教室を出る前に隼人に捕まってしまい、どこに行くんだと問われ続けていたため、到着時間が遅くなってしまった。 蓮くんと屋上でご飯を食べてくるーー。 ちゃんとそう答えればよかったのに、どうしても2人だけの秘密にしておきたくて……本当のことを言わず、先生の手伝いと嘘をつき逃げてきたんだ。 (隼人……ごめんっ!) 心配そうな表情でぼくを見つめる隼人を思い出し、心の中で謝る。 「…………な。……なずな? どうした?」 「あっ、なんでもないよ! ちょっとぼーっとしてただけ。早くお昼食べようっ!」 お弁当箱の包みを解いていると、ふわーっと暖かい風が吹きぼくたちの髪がなびく。 「乱れてる……」 そう言って蓮くんの手がぼくの頭に伸びてくる。優しく撫でられるように触れられ、乱れた髪を直してもらう。 その温もりがとても心地よくて、目が合うと自然に互いに微笑んでいた。 「蓮くん……お星様みたい」 キラキラ輝く彼の表情を見て、自然と言葉を発してしまう。 あっ!っと、急いで口を抑えるが今更遅い。 蓮くんの耳にも届いてしまい、気分を害してしまっていないかとひとり焦ってしまう。 「……。それじゃあ……なずなは俺にとって陽の光だな」 呆れたり馬鹿にするのではなく、同じような言葉を返してくれる蓮くん。 「ぼくが、お日様……?」 そう聞き返すが、お前は知らなくていいと言われ、蓮くんは黙ってお昼のパンに噛り付いてしまった。 それから2人で、たわいの無い話をしながらお昼を食べていった。 休憩が終わるまで残り15分ーー。 隣で微かに蓮くんが動いたので、そろそろ教室に戻るのかと少し残念な気持ちになっていると、突然ぼくの膝に重い何かがのしかかる。 「ーーっ!!」 「10分経ったら、起こして」 そういって、ぼくの膝を枕にして目を閉じる蓮くん。 突然の出来事に驚きながらも、嬉しい気持ちが勝ってしまう。 緊張が伝わらないよう、必死に震えを抑えながら、彼の髪をそっと撫でる。 しばらくすると、蓮くんが静かに口を開いた。 「最近自分でも、変わってきたなって感じるんだ。……でもそれはいい方向にって意味で。そうさせたのは……なずな、お前なんだよ」 風の音で聞き取りづらかったけど、最後の「ありがと」という言葉も、ぼくの耳にはしっかり届いたよ。 「蓮くん……」 本当は、好きという二文字も言いたかったけど……今のぼくには、これだけで十分幸せ。 もう少しこの時間が続きますようにーーそう願いながら、愛しい気持ちを表す言葉は心の奥へと飲み込んだ。

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