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第50話 sideR
『なんかさ、蓮変わったよねー』
『わかるー! 優しくなったっていうか、笑うようになった!』
『あれはあれで、いいよねー』
最近周りから聞こえるこの言葉。
今もこうして廊下を歩いてるだけで、俺の耳に届いてくる。
「ちぇーっ。相変わらず、蓮ばっかりモテモテだよなー」
「モテてないから」
隣で口を尖らしているイヨの顔が面白くて、ゴムで結びあげている前髪を突く。
「あっ……イヨくん、トキめき♡」
「笑えない冗談言うなよ」
反対側を歩く敦が、イヨの口を摘みながらツッコミをいれる。
最近になって気づいたけど、昔から俺の触れられたくないことにはスルーして、いつも側にいてくれるふたり。
イヨと敦にどれたげ助けられてきたんだろうと、考えることが増えた。
「でもほんとお前さ、最近いい顔で笑うようになったよな」
「……あぁ」
照れ臭いけど、否定はしない。自分でも変わってきたと言う自覚があるからだ。
ーー俺の中で、なずなの存在が大きくなってきている。
そしてその感情が、自分をプラスに動かしている。
「でさー、その後急に体が動かなくなってね」
「っっ! それ怖い話でしょ!? 隼人のバカッ」
廊下の少し先から聞こえる、なずなとその友人の声。
その後ろ姿を無意識に、じーっと見つめてしまう。
「……くくっ」
小さな笑い声がし隣を向くと、ニヤニヤとした顔で敦が俺のことを見ている。
(合宿でも同じ班だったし、イヨと違ってこいつは頭いいからな)
きっと全てを分かっているんだろう。
「頑張れよ……蓮」
「……ん」
バレていると確信にも変わる友人の応援の言葉を胸の奥にしまい、少しずつーーなずなとの距離を近づけていった。
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