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第9話
sideR
一度だけ、アイツからの視線が気になって振り返ったことがある。
(周りのヤツらみたいに、騒ぐか?)
しかし彼の反応は、俺の想像とは全く違った。
目があった瞬間、瞳を潤ませながら顔を赤らめ走り去って行く。
たった一瞬の出来事だったけど、俺の頭には鮮明に記憶された。
(今の……なんだよ)
風邪でもひいたのかって位、自分の頬が熱いと感じる。
今までに感じたことのない感情が、俺の心を支配する。
それからは、周りにバレないようにアイツのことを調べた。
名前は、若森なずな。俺みたいに騒がしいグループにいるわけじゃないが、友達もそこそこいる。
読書をするのが好きらしい。
知れば知るほど、なずなが気になる。出来れば……もっと近づきたい。話してみたい。
「なぁ、お前なら……本当の俺を見ても離れないでいてくれるか?」
誰もいない家で、そっと声に出してみる。
次のクラス替えで同じクラスになって、仲良くなれたらいいな……。
そうしたら、勇気を出して声をかけるからさ。
この願いが叶うなんて、この時の俺は思いもしなかった。
ーーなずなの花言葉のように、俺に全てを捧げて……愛してくれよ。
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