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第10話

教室の入り口に立ち、室内を見渡す。 宮原くんは友達5人と一緒に、窓際の1番後ろの席あたりで話していた。 (うわー。本当に、同じクラスなんだ) これからは授業中も宮原くんを見ていられる。 受験生だから、勉強もしっかりしないといけないけど……今はまだ、この気持ちを抑えられない。 「なずな、そろそろチャイム鳴るよ? 席つこうぜ?」 そう言って隼人は、黒板に書かれた座席表から自分の名前を探して席につく。 隼人のやつ、三浦って名字だから宮原くんの前の席だ。少し羨ましい。 そんなことを思いながら、ぼくも自分の席を探した。 (わ行の苗字、僕だけか) 若森と書かれた、窓際1番後ろの席に向かう。 「おっ、さっき蓮が助けてたヤツ、同じクラスじゃん!」 突然声をかけられ、バッと顔を上げる。 そうだ。この席の近くで、宮原くん達集まって話してたんだった! 「名前、なんて言うのー?」 「1年間、よろしくなー」 宮原くんの友達が次から次へと話しかけてくる。嫌じゃないけど……こういうノリに慣れていない。 「あっ、えっと……若森 なずなです」 少し声が小さかったが、ちゃんと返事が出来た。 「なずなって言うの? 可愛い名前じゃん! 俺、伊代 哉斗。イヨでいいから、よろしくな!」 「俺は、沢城 敦。んでこっちがーー」 宮原くんの友達は、どんどん話していく。こんないっぱい、すぐに覚えられるかな……? 「ーーで最後に、さっき若森くんを助けたイケメンが、宮原蓮!」 「敦、一言多い。……よろしく」 宮原くんがぼくをじーっと見て挨拶してくれた。 「こちらこそ、よろしく……です。あと、さっきはありがとう。宮原くーー」 最後にちゃっかり名前を呼ぼうとしたが、チャイムに遮られた。 「先生来んじゃん。席つこーぜー」 イヨくんや敦くんが席に戻って行く。 そうだよね。同じクラスになれただけでも凄いんだ。 これ以上望んだら、バチが当たるよね。 そんなことを考えながら、ぼくも自席につこうとする。

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