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第17話

「……ふぅ」 ドアノブを握りながら一呼吸し、笑顔の練習をする。 ーーガチャ。 「お待たせ。母さん買い物に行っててさ、掃除機出すのに時間かかっちゃった」 「ほんと、おせーよ。待ちくたびれたわー」 ぼくのベッドに寝転び、携帯をいじりながら隼人はぼくに笑いかけてくれる。 いつも一緒にいてくれる友人の顔をみて。思わず涙が出そうになった。 勘のいい友人にバレない様、掃除機の電源を入れ、顔を隠すように俯きながらガラスの破片を吸っていく。 「ねぇ、隼人……。こんなぼくだけど、ずっと友達でいてね」 掃除機の音で掻き消されるのをいいことに、ぼくはそんなことを呟く。 ーー当たり前だろ。 こう聞こえた気がするのは、きっとぼくの心が弱っているからだよね。

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