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第18話 sideH

部屋の扉が閉まり、俺はため息をつきながらベッドへ寝転ぶ。 (あいつ、また1人で悩んでんな……) 幼馴染で親友。 幼い頃から一緒にいるんだ。口にしなくても、気付くことがたくさんある。 ま、なずなの場合は人一倍表情に出るからな。 自分では隠しきれてるつもりらしいけど。 親友のコロコロ変わる表情を思い出し、プッっと吹き出す。 幼稚園の時、全部食べ終わるまで遊んじゃいけません! って先生に言われてたんだけど、苦手なトマトがどうしても食べられなくて。 最後まで涙目で教室に残ってるあいつのトマト、俺がこっそり食べて、2人で園庭に遊びに行ったな。 小学生の時は、見た目でからかわれてた時期もあったっけ。 『僕と一緒にいたら、隼人も嫌なこといっぱい言われちゃうよ。だから……』って、自分のことよりも周りを心配するあいつ。 そんな優しい奴だから、俺は離れられなかったんだ。 一緒にいて気を使わない。大切な……大切な親友。 ーーガチャ。 「お待たせ。母さん買い物に行っててさ、掃除機出すのに時間かかっちゃった」 「ほんと、おせーよ。待ちくたびれたわー」 お前が何かに悩んでいるのは気づいてる。……でも、なずなから言ってくるまで、俺からは聞かないよ。 その代わり、いつもの笑顔でバカみたいに声をかけてやる。 だから……不安な時は、隠しながらでもいい。 今みたいに声にだせよ。 「当たり前だろ」 お前が安心する言葉を、何度だって返してやるからさ。

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