28 / 51
第28話
1時間目、2時間目……と小テストを中心に授業が進んでいき、気づけば4時間目になっていた。
始業式の翌日ということもあり、今日はこの時間が終われば帰宅ができる。
最後の授業は理科で、チャイムと同時に担任でもある倉科先生が、教室に入ってきた。
「学年も上がったことだし、小テスト〜と言いたいところだが、今日は別のこと決めるぞ」
そう言ってぼくたちに背を向けると、チョークを持って何かを書き始める。
黒板には、勉強合宿という言葉が記されていた。
周りのえー! という声を無視して、倉科先生は説明を始める。
「君たちもついに高校三年。学校がまた始まったこと、クラスが変わったことで今はまだ頭がいっぱいかもしれないが、受験や就職と向き合う時期だ。学校行事スケジュールにも書いてあるが、早速来週にはうちの学校が保有している宿泊所で、二泊三日の勉強合宿が始まるから、今日はそのグループ分けをするぞー」
まずは受験組、就職組で分れろ。と先生が指示を出すと、生徒全員が一斉に席を立ち教室の左右に分かれる。
ぼくはこれといった夢はまだないが、大学受験を希望しているので、受験組の方に移動する。
「おっ、なずな……だよな? お前も、受験組?」
スッと、ぼくの隣にきて話しかけてくれたのは、蓮くんの友達のイヨくん。そしてその隣には敦くん。
「うん。隼人は就職するから、1人で心細かったんだけど……2人が声をかけてくれて安心したよ。ありがとう」
「友達は向こうなんだ。俺たちも、蓮は就職組だから離れちゃってさー」
そう言って、敦くんが蓮くんを指差す。
その方向を向くと、隼人から少し離れた位置に蓮くんがいた。
(蓮くん、就職するんだ……)
ぼくの中に刻まれた、また新しい蓮くん情報。
ぼくたちの進路は違うんだから、高校を卒業したらもう会うことはないと分かる。それならば……この1年間で、どれくらい彼を知ることが出来るのだろう?
周りに気付かれないようにするからーーもっともっと彼のことを知りたい。
この合宿でも、チャンスがあるならーー。
そんなぼくの思いが届いたのか、倉科先生は『受験組から2人、就職組から2人の4人組で班を分ける』『分け方は、くじ引き』と言い出した。
自分の前に、番号の書かれた紙を入れたボックスが回ってくるまで、ぼくは心の中で何度も神様に願った。
ーーどうか、蓮くんと同じ班になれますように。
ともだちにシェアしよう!