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第30話 sideR
目の前に座るあいつが、さっきからずっと俯いてて気になる。
気分がいい時は笑顔で接するし、そういう気分じゃない時は、周りが騒ごうと基本返事をしない。周りを気にせず自分のペースで過ごす。
そんな俺なのに……何故かこいつーーなずなの事だけは気になって仕方がないんだ。
肩に触れようと思い手を伸ばすが直前で止め、指で机を叩き声をかける。
「具合わるい? 大丈夫か?」
「ーーっ!! う、うん。大丈夫……ありがとう」
分かりやすくビクッっと肩を揺らし顔を上げると、なずなは驚いた表情で俺を見たが、すぐに逸らされてしまう。
何故か胸がチクッと痛くなった。
(なんで顔を逸らすんだ……? 俺、あいつが気にするようなこと、言ったか?)
朝、あんな事を思い出したからだろうか。
今日はやけに弱くなってしまう。
ーーおかあさん! どこに行くの? 俺も連れてってよ。
ーー蓮はいい子でしょ。しっかりお留守番をして、待っててね。
最後に見た母親の姿は、知らない男と腕を組み俺から離れて行く後ろ姿だった。
何度も「蓮はいい子」と言われたが、母親が俺をちゃんと見てくれたことは……父親が死んでからは一度もない。
(なんで今、思い出すんだよ……)
久々のこんな感情に自分でも戸惑い、思わずため息が出る。
合宿のリーダーになった山本には悪いが、さっきから確認をしているスケジュールは、俺の耳にほとんど届かなかった。
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