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第31話
しかし、いつまでも合宿のことばかり考えていられない。
昼前に授業が終わったのは初日のあの日だけで、翌日からぼくたちは、去年よりも難しくなった授業に必死についていく。
合宿前だというのに、先生たちは容赦なく宿題を出してくるから、ぼくたちがゆっくり休めるのは昼食の時間位だった。
パンのカスをポロポロ落としながら、目の前で昨日のテレビの話をする隼人。そんな隼人の話を真剣に聞いているふりをして、ぼくは何度も……隼人の後ろにいる蓮くんを見ていた。
この数日で、彼のたくさんの癖を知ることができた。
イヨくんや敦くんがくだらない事を言うと、呆れながら右手で首の裏を押さえる。
欠伸をした後は必ず顔を左右に傾けて、首をぽきぽきって鳴らす。
お昼ご飯は、隼人と同じでお弁当じゃなくパン。必ずあんぱんを持ってきてて、つぶあんじゃなくてこしあんなんだ。
日に日に増える、ぼくの知らなかった蓮くんの姿。
そして今日からいよいよーー合宿が始まる。
二泊三日、蓮くんと夜まで一緒にいられるんだ。しかも、部屋まで一緒!
もちろん目的である勉強もちゃんとするけど……今はそのことで頭がいっぱいになってしまう。
(蓮くんの寝間着姿って、どんななんだろう? ってか、お風呂も一緒ってこと!? わぁー! どうしよう……!)
駄目だと分かってるのに……1人で想像して、かーっと赤くなってしまう。
そんなことを考えているうちに、ぼくを含めクラス全員がバスに乗り込み終えた。
班ごとの席割りでぼくたちは、敦くん・蓮くん。通路を挟んで、山本くん・ぼくの順で座っている。
「高校生なんだし大丈夫だと思うが、忘れ物はないよなー? ……それじゃあ、いくぞー」
先生の声でバスが出発する。
ぼくは山本くんと話し、蓮くんは目を閉じて寝むりながら、合宿先へと向かった。
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