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第35話

「「ゔっ、ゔぅ〜」」 食器のぶつかり合う音とともに、周りから聞こえる明るい話し声。 ……しかしぼくの横からは、とても低い唸る声だけが聞こえる。 箸を持ちながら、机に頬をつけ寝そべる隼人とイヨくんは、ぶつぶつと何かを唱えていた。 「大丈夫……?」 いつも元気なふたりだからこそ、この様子に戸惑ってしまう。 ぼくの分だけど……これで元気が出ればと、隼人が好きな唐揚げを2人にあげるが、ふたりはピクリともしない。 (あのふたりをこんなにするなんて……恐るべし勉強合宿!) 「こいつらの相手してたら、時間なくなるぞ」 「そうそう。これくらいが静かでちょうどいいから、ほっときな♪」 ご飯を黙々と食べながら、蓮くんと敦くんがぼくに言う。 確かに、この後お風呂に入ったら自室で復習しないといけないし……。 ふたりに対し、ごめんね。早く元気になってと思いながら、箸を持ち直して、唐揚げを口の中に放り込む。 (…………!!) 「うぐっ! ケホッ、ケホッ」 「大丈夫かよー?」 山本くんが、心配しながら水をくれる。 それを受け取ると、一気に飲み干してお礼を言う。 まって!この後、お風呂!? スケジュールを思い出し、頭の中はプチパニックを起こす。 人の心配をしてる場合じゃなかった。早く部屋に戻って、準備をしなきゃ! 好きな人と一緒だなんて……恥ずかしい!と、乙女チックな考えをしてしまう。 クラスの他の男子もいるのに、冷静さを失った今のぼくには、その判断が出来なかったんだ。 思いが止まらなくて、蓮くんのほうを向くと、タイミング良く目が合ってしまう。 カッコいい彼を直視できず、ぼくはパッと顔を逸らしてしまった。 (お、落ち着け〜) ぼくは周りを気にしないように、目の前に置かれた食事に視線を落としそこだけに集中し、黙々と食べ続けた。

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