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第37話 sideR
「--っ!!」
風呂場に向かってる途中、腰のあたりにひんやりするものが当てられた。
勢いよく振り返ると、目の前には自分の右手を左手で押さえ、目を左右に動かす挙動不審ななずながいる。
「えーっと……その……。あっ、糸くず! 蓮くんの腰にね、糸くずが付いてたの! それを取ろうと思って……ごめんなさい」
「……そっか。俺も驚いて悪かった。さんきゅ」
俺の言葉を聞いて、分かりやすくホッとするなずな。
本当は嘘だって分かってる。……けど、それを伝える気にはならなかった。
どうしてそう思ったのかは、分からないけど……真実を伝えて、悲しむこいつの顔を見たくないと感じたんだ。
「お前危なっかしいから、前歩け」
肩を押し、俺の前を進ませる。
(触れたら、溶けて消えそうだな……)
雪のように真っ白で、傷1つない綺麗な肌。
小柄で太ってるわけじゃないから、腰にかけてのシルエットも、はっきりとしている。
よく分からないけど……女より綺麗。
純粋にそう感じた。
今までに身体の関係をもったことは、それなりにある。
でも、目的はただ処理をするだけ。
触れたいと思ったこともなければ、綺麗だと感じたこともない。
それなら、今俺の前にいるこいつのことは?
綺麗だと思い、触れたいと思った。
そして--手に入れたい。
今までに感じたことの無い感情が、俺の体を駆け巡る。
--ガラガラッ。
「「やっときた! くらえっ!」」
「わっ! うぷっ!」
目の前にいるなずなを捕まえようとしたが、
こいつの友達の隼人とイヨが、扉を開けたなずなにシャワーをかけ戯れ始めた。
「……最悪っ!」
「ははっ! なずな拗ねんなよ〜。っつーか、早くこっちこいって」
「蓮もおっせーよ!」
「あぁ」
あっという間に拐われた。
俺が欲しいものは……いつだって手に入らない。
(大丈夫……今に始まったことじゃないんだ)
そう自分に言い聞かせながら、掴むものが無くなり宙で彷徨う腕を、フッっと静かにおろした。
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