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第11話
「夢妖京は、人ならざるもんが集う霧向こうの世界…と、人間側からすればそう語られているらしいのじゃがな。
儂とて例外ではない。
自らの認めた言の葉によって悪鬼を祓い、病める心があればその曇 を取り払い、そして吉兆の呪い をかける。
一応、それで生活するくらいには呪術の道には通じておるでな」
話を聞きながら、俺はこの家に貼られていたお札を思い出していた。
あれは、そういうことだったのか。
「全部、雅さんが書いたんですか?」
「そうじゃよ。見苦しくて恥ずかしいのじゃが…儂は純粋な呪術師ではないからのう。家ひとつ建てるにもこうせねばならん」
「…?」
はぁ、と溜め息をついたのが気になった。
じっとその顔を見つめたけれど雅さんは特にそれについて話そうとはしなかった。
代わりに、また嬉しそうな笑みを浮かべてみせた。
「儂を名前で呼んでくれるとは、嬉しいの。心外じゃ」
「それは…だって、」
貴方にぴったりな名前だと直感的に思ったから、なんて言える筈がない。
二杯目のおひつに出汁を回しかけながら、俺は本心を本当の気持ちに装った。
「わざわざ家にまで上げてくれて、ご飯まで戴いて…色々なことまで話して頂いて。嬉しい、です。雅さんに出逢って」
自分で話していて、ありのままを話さなくて本当に良かったと思った。
でなければ恥ずかしさで爆発四散する。
「そうかの。…儂も音羽に出逢えて、今凄く楽しいのじゃよ。
お主が疲れ果てた目をして此方を見ていたのでの、放っておけなかったわい」
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