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第12話

「えっ…」 浅葱色の瞳に、心ごと掬われた気がした。 昼下がりの湖面のような、ゆらゆらとして綺麗な色が、俺を捕らえる。 「音羽が心から帰りたいと願っておれば、儂もすぐに離れておったのじゃがな。どうも、そうは思えなかったのでの。 何があったか話すのは辛かろうが、聞き役にはなるでよ」 「………」 お茶を飲み終えると、雅さんはそれを畳の上に静かに置いた。 帰りたい、と思わなかったことがあまりにも自然だった。現に、こうして慣れない環境を心地良いとすら思える程には。 生まれてきて13年。 がらりと周囲の態度が変わってから約1年。 これまでの人生は、あまりすらすらと語ることは出来ない。 「…俺は」 それでも、雅さんになら話せる気がした。 この人なら包み込んでくれるような妙な確信があった。

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